徽章はバッジにしてピン

世界の徽章文化を考察するブログ。というか、バッジが大好き。コレクションを紹介したり、バッジに関する情報を考察したり。実用性皆無、実生活への寄与度ゼロ保障のブログです。

日本 京都市衛生組合連合会有功章(3種)

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子供の頃から体が弱かった。幼稚園も小学校も皆勤賞などとはまったく無縁で、1年を通じて欠席したことがないクラスメートのことが信じられなかった。私にとって病院はごく日常的存在であり、医師や看護師にもごくなじんでいた。日本の医療制度の恩恵を人一倍受けてきたといえるかもしれない。

ところで、2014~2016年、西アフリカでエボラ出血熱の流行があった。病名にもなっている症状の激しさ、致死率の高さから、これが日本で発生したら、間違いなくパニックになったであろう。

この時期、ある医師がメディアに投稿した記事が印象に強く残っている。この問題の本質はエボラウイルスではない、という内容であった。

この地域は、そもそも大衆の医療体制が極めて脆弱であるため、エボラだけでなく、結核病などの伝染病や乳幼児死亡率がそもそも深刻である。患者が発生すると、仮に入院できたとしてもそのケアは基本的に家族が負わねばならず、伝染病対策としては極めて問題が大きい。また葬儀時に遺体に参列者が触れる風習があるなど、衛生教育の不徹底も大きいという。

つまり、医療の仕組みを根本から変えていかないと意味がなく、エボラウイルスさえなくなればよい問題ではないというのである。

この指摘は、今回のコロナウイルス騒動でも同じことが言えるだろう。経済大国となった中国はもちろんのこと、外国人旅行者の増えた日本でも、大きな課題が残ったといえる。

 

さて、近代のわが国でも伝染病対策は重要な課題であり、明治30年頃から伝染病予防法に基づいて各集落に衛生組合という組織が設けられた。公衆衛生の発達と改善を目的とした公共組合で、衛生教育の徹底から伝染病の発生報告、時に伝染病密告箱の設置まで行われていたという。

全国各地で作られた組織であるため、衛生組合関連バッジというのは、バッジコレクターにとっては割となじみの存在である。

で、画像のバッジは、京都市衛生組合連合会の有功章。3種まとめて手に入ったので紹介する。有功章とあるからには、単なる役員章などではなく、なんらかの功があったあったはずだが、3種まとめて売買されていたということは、元は同一人物が所有していたものと考えるのが自然だろう。とすると永年勤続表彰的な性格の有功章ではないかと想像する。

バッジのデザインは桜花型ですべて共通だが、裏面を見るとこの3種、材質が異なっていることがわかる。1~3級ではないかと思われる。

左は「純銀」、中央が「K9」、右が「K9」「PM」の刻印が見える。

K9は、9金だ。一応金質だが純度は低く、そのためか歴年の変色が浮き出ていて、正直あんまり金製バッジという印象を受けない。

PM」の表記は、以前調べたことがあったのですぐわかった。プラチナ製を意味する昔の刻印だ。現在では「PT」である。1960年代頃から変わったらしい。中央の部分がプラチナ製の別パーツということなのだろうか、外見からは判然としない。。

このバッジ、残念ながらいつ作成されたものなのか不明である。箱の感じからして、大正~昭和初期ではないかと思われるが自信がない。

それにしても、この衛生組合の連合会がそれなりの規模(と財力)を持っていたことをうかがわせるバッジである。