ご無沙汰です。
本当に、いつものことながら新年度というのは慌ただしく、自然とブログの投稿から離れてしまう。いやネタはいろいろあるんだけど。それでもしばらくたつと仕事の環境に慣れて心の余裕が生まれるのか、そうするとブログでも書こうかなーという心境になる。不思議だ。
さて、今日はバッジの脇役というべき、バタフライクラッチについて取り上げる。
バッジ製作メーカー「ピンズファクトリ―」の公式サイトに「バッジの読み物」が掲載されていて、その内容を引用し、実物を見ながら書いてみたい。
さて、バッジには服に取り付けるためのツクリが不可欠である。安全ピンタイプ、ハットピン(スティック)タイプ、ネジ留めタイプ、船足タイプなど、さまざまである。
現在最もポピュラーなのが「針とクラッチ」を使ったタイプである。バッジ裏面についた針を服に刺し、裏面からその針に留め具(クラッチ)を差し込んでバッジを固定するのである。便利で製作も安価なので広く普及している。このタイプのバッジは、ピンズなどとも呼ばれることも多い。
ピンズファクトリーの「ピンバッジの誕生とバタフライクラッチの歴史」では、クラッチの中でも最も一般的なバタフライクラッチについて詳しく記述されていて、これが非常におもしろかった。
www.pins.co.jp
ピンバッジの代表的なアタッチメントであり、ピンバッジのイメージを決定づけるバタフライクラッチはどのようにして生まれたのでしょうか?その生みの親はアメリカの宝飾部品メーカーであるバロー社(B.A.BALLOU&CO.INC.)という企業でした。(略)
このバタフライクラッチは1942年に特許が取得されて以降、ピンバッジの留め具(アタッチメント)として世界中に広まっていきました。もしバロー社製のバタフライクラッチを使用しているピンバッチを見つけたらそのバタフライクラッチの裏面をご覧になってみてください。そこには必ず”BALLOU REG’D”の文字の刻印を見つけられるはずです。”REG’D”とはREGISTEREDの略称で「登録済み」を意味していて、つまりこのバタフライクラッチが特許登録済みということを表しています。直径13mmにも満たない小さな部品とはいえ、生み出されるべき背景と確固たる歴史があったのですね。
(バタフライクラッチの誕生)
ただし、バタフライクラッチのすべてがバロー社製というわけではない。どう見てもその他社製のバタフライクラッチのほうが圧倒的に多そうなのだ。両者の間には品質上の差があるという。
さて、それでは同じバタフライクラッチでもバロー社ブランドとノンブランドとでは何が違うのでしょうか?まずバタフライクラッチは1枚の金属板から切り出しと加工を経て製造されますが、ノンブランドの金属の板厚が0.25mmに対してバロー社ブランドのバタフライクラッチの板厚は0.35mmと金属の厚みが増しています。たった0.1mmの厚さの違いですが、それによってノンブランドと比較して針が突き抜けにくくなっています。特別に意図して力を加えれば別ですが、通常の使用ではまず突き抜けることはないでしょう。また、はじめは留め付け時のツマミに固さを感じるものの、かっちりと留め付けることが出来る感触はノンブランドにはない安定感と言えます。装着時における外れにくさや脱着回数の耐久度も比較的に高く、好んで選定される理由があることもうなずけます。※当社内の品質検査では、バロー社ブランドのバタフライクラッチは耐用回数や引張強度においてノンブランドより優れていることを確認しています。
(バロー社製バタフライクラッチの特徴とその価値)
そうだったのか、とこれは新発見であった。バタフライクラッチの刻印など、マジマジと見たことがなかった。
さっそく自分のコレクションにあるバタフライクラッチをチェックしてみた。ところが、あまりにもありふれていて、いくらでもあると思っていたバタフライクラッチが意外と私のコレクション中にそれほど多くないことに気がついた。あるのはオリンピック関係のものくらいか。そう、バタフライクラッチが発明されたのは1942年のことで、それ以前には存在しないのだった。
確認したほとんどのバタフライクラッチはここでいう「ノンブランド」なのであろう、無字のタイプであった。が、中にはいくつかのバロー社製バタフライクラッチを発見することができた。2つのタイプの刻印があったので、まずはそれを見ていこう。
画像の左から2つがバロー社製で、刻印は「BALLOU REG’D 130YEARS」、「BALLOU REG’D」。一番右が比較用のノンブランド品らしき無刻印のもの。バロー社のクラッチの刻印はこの2つが多いようだ(他にもあるかもしれないが不明)。
なお、バロー社は1868年創業なので、130周年は1998年となる。したがって、「130 YEARS」の刻印があるものは少なくとも1998年以降のもの、ということになる。
「ノンブランドの金属の板厚が0.25mmに対してバロー社ブランドのバタフライクラッチの板厚は0.35mmと金属の厚みが増しています。」という点については、実際どうなのだろう。試しにバタフライ状のつまみを指でつまんでみると、確かにバロー社製のほうが弾力が固く、ノンブランドのほうが柔らかい。明らかに差を感じるほどだ。バロー社製かノンブランドか、感触だけでも判別することが可能だ。
これは発見だった。これだけ弾力に差があれば「耐用回数や引張強度」も当然変わってくるだろうと思われる。
また、記事では「ノンブランドと比較して針が突き抜けにくくなっています」とあり、私も経験上、過去使っていたバッジのバタフライクラッチは、針が当たって穴が開き、針先が突き抜けていたことがあった。あれはきっとノンブランドだったのかも。
ピンバッジコレクターの間では、ピンバッジにバロー社ブランドのバタフライクラッチが装着されているか否かもピンバッジの価値を図るポイントとなっていると聞きます。バロー社ブランドのバタフライクラッチはノンブランドと比べて製造コストが若干高いのですが、おそらくピンバッジコレクターは“それ故”に製造個数が少ないのではないかと推察し、そこに希少価値を見出しているためだというのが一説です。逆にピンバッジを製作する側の企業としては、そのピンバッジの重要さや貴重さに見合った仕様にするために、バロー社ブランドのバタフライクラッチを採用してピンバッチに特別感を醸成させるケースも見られます。
(バロー社製バタフライクラッチの特徴とその価値)
バタフライクラッチの刻印を見て、「おっ、これ高級なクラッチ使ってるね」と感じるカスタマーがどれだけいるのか私にはわからないが、これもこだわりどころということか。まあそんなのバッジマニアくらいじゃないかなーという気がする。
ただまあ、私の趣味から言わせてもらえれば、バタフライクラッチ自体がそもそも安価なクラッチであり、バロー社製であろうがなかろうが価値の差はそんなにないような気もする。私は、昔ながらのネジ止め式のほうが好きである。
バロー社ではバタフライクラッチの材料確保が難しいことと、従来のバロー社製バタフライクラッチの品質を保った生産が行える体制ではないことから、現在はここで説明しているようないわゆる「バロー社製バタフライクラッチ」を入手することがほぼ不可能な状況です。したがって現在はお客様に「バロー社製バタフライクラッチ」をご提供することができません。
というわけで、どうやら世間的には完全にノンブランド品が席巻している状態のようだ。これはこれで味気ない気もするな。
バタフライクラッチを巡る知識など、無駄といえば無駄の極みであろう。
しかし、バッジを見るときに「あ、このクラッチ、バロー社製だね。このバネの感触だけですぐにわかったよ。最近じゃ珍しいな。高級品こだわって使ってるねえ」などと、言って周りの人をけむに巻くのも楽しいかもしれない。
私としては、さすが業界のプロの情報は違うなーと感心しながらピンズファクトリーのこの記事を読んだ。
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