地獄のポル・ポト政権から国を解放したのは、ベトナム軍とベトナムに亡命していたヘン・サムリンらであったが、これでめでたしめでたし、とはいかないのがカンボジアを取り巻く情勢の複雑なところだ。
カンボジア民衆にとって、ベトナムは歴史的に憎むべき敵国で、伝統的に反ベトナム感情がこもっているといわれる。それがために、ようやく誕生したヘン・サムリン政権もベトナムの傀儡政権と反発を受けたし、ポル・ポト派が壊滅しなかったのもカンボジアの反ベトナム感情に支えられたからともいう。
さらに、米ソ対立の中と中ソ対立という大きな国際情勢の中で、カンボジアが揉みくちゃにされてしまったという面もある。
このバッジは、恐らくヘン・サムリンらのカンボジア解放を記念したものと思われる。赤地にアンコール・ワットを染め抜いた旗を掲げる兵士が、椰子の木の生えた土地を進軍する様子が描かれている。