徽章はバッジにしてピン

世界の徽章文化を考察するブログ。というか、バッジが大好き。コレクションを紹介したり、バッジに関する情報を考察したり。実用性皆無、実生活への寄与度ゼロ保障のブログです。

中国 中華毛沢東像章収蔵研究会 王安廷奨励章

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kjhst220 さんのところで紹介されていた『毛沢東像章図譜』(王安廷主編 毛沢東像章図譜編纂委員会編 中国書店出版社)。A4版で400ページに及ぶ毛沢東バッジ写真集である。収められたバッジの数は4,000枚以上(ほとんど文革期のもの)。
デザインでバッジを分類する単純な掲載のしかただが、そこに掲載された毛沢東バッジの多様さはこの世界の奥深さを感じさせるに充分だ。

この本が出版された1993年は毛沢東生誕100周年記念の年に当たり、毛バッジに関する本が相次いで出版され、毛バッジコレクションブームの元となった。

さて、中国の毛バッジコレクターには、すさまじいヤツがたくさんいるのだが、その中でも代表的なひとりが、この本の編者である王安廷氏。本のバッジは、もちろんすべて彼のコレクションだ。
四川省省都成都市に住む王安廷氏は、人呼んで「像章大王」。
なんと、文革グッズを3t所有しているという。コレクション量を点数ではなく、重量であらわすというのもスゴイ話だ。
1989年の時点で、15,870種・53,919枚の毛沢東バッジを所有していたそうだ。

彼のプロフィールを簡単に紹介しよう。
1933年、貧しい農家の生まれ。3歳にして父親を失い、10歳にして木工業の修行に入る。暮らしは貧窮を極めたという。
解放後、2年間学校に通って文字を習い、木工職人として働いた。「毛主席がいなければ、私はとっくに飢え死にしていた」と語る。それだけに、毛主席に対して思い入れが深い。文革が終わり、各地で毛沢東バッジを回収し熔解する動きが始まると、彼は自分のありとあらゆるところを回ってバッジの収集をした。
コレクション歴は、1952年頃以来、数十年に及ぶ。北京の博物館が、北京の住居と生涯年金を条件に、コレクションの引き取りを願い出たが、それも断ったらしい。また、某アメリカ人夫妻が50万ドルで全てのバッジの購入を申し出たが、これも拒絶。
「私がバッジを集めているのは金のためではない。毛主席を記念するためだ。私が死んだあとは、コレクションはすべて国家に寄贈する。これは人民の財産であり、人民が所有しなければならない」。
これが信念だそうだ。

経歴から見てわかるとおり、けっして彼はインテリ階級ではなく、歴史学者でも毛沢東の研究者でもない。それどころか、普通なら高校を卒業する年齢でようやく文字を学んでいるほどである。
それだけに、まったく理屈じみたところがなく、熱意はストレートだ。
この「毛沢東像章図譜」は、同年出版された北京出版社「毛沢東像章収蔵図鑑」(上海市在住・黄水金氏のコレクションによる)の詳細な分類に比べると、資料として完成度というかは劣るが、相当の労作といえるものである。毛バッジに関心を持つ人にとっては、黄氏の「図鑑」と併せて、必携の1冊であろう。
面白いのは、王氏のコレクションが四川省のものを中心としている点で、その地域性に興味を引かれる。

王氏は、自宅の一部で「王安廷小小展覧」という私設展示室を開いている。この人は単なるコレクターにとどまらず、みずから「中華毛沢東像章収蔵研究会」を主宰しミニコミ誌「現代文物」を発行している。

私の友人が、1999年に成都に寄ったときこの展示室を訪れ、参観すると共に、これらミニコミ誌や若干のグッズを王氏から直接もらい、私にくれたのだ。感謝に堪えない。
このミニコミ誌がまたなんというか、まるで文革期の紅衛兵造反組織が発行した小報そっくり(ただし、意識的にマネしているのかは不明)。本当に、この人は毛沢東が好きなのだ、ということだけはよーくわかる。このミニコミ誌へのマニアの投稿が濃すぎて笑える。

画像は、「バッジ大王」自ら作ったバッジ(笑)。病膏肓に入る、というか「ミイラ取りがミイラになる」を地でいく展開。いくら毛沢東バッジが好きだからって、なにも自分のバッジを作らなくてもなあ。
しかもこれ、12月26日は毛沢東の誕生日なんだが・・・。
限定1000枚だそうだ。でも「王安廷奨励章」ってなんだ?(笑)