徽章はバッジにしてピン

世界の徽章文化を考察するブログ。というか、バッジが大好き。コレクションを紹介したり、バッジに関する情報を考察したり。実用性皆無、実生活への寄与度ゼロ保障のブログです。

中国 「清共」腕章

イメージ 1

アンチ・コミュニスト関係でもうひとつ。こちらも中国だが、国民党がまだ台湾に逃れる前の中華民国時代である。時代はよく分からないが、第二次国共合作(1937年)以前のものではないかと思っている。

それもずばり「清共」と書かれている。日本人の感覚では、さほどインパクトのある字面ではないかも知れないが、言うなれば「清除・共匪」となろうか。すなわち、「コミュニスト粛清」の意。

「清」の字には、「汚れたものを取り除く」というニュアンスが含まれており、蒋介石率いる国民党政府からすれば、共産主義者などというものは、社会を内部から腐敗させる病原菌のような存在であったわけだ。忌まわしく憎むべき敵、という感じである。

腕章には、「元字第八七弐号 清共 南雄新田約警衛隊後備隊員」とある。
「南雄新田」とは地名であろう。広東省の北部に南雄市という地名が現在もある。中華民国時代は南雄県だったが、県内の郷鎮で使用されたものかも知れない。
薄い木綿布でできた腕章(上腕部に縫いつけるシルシ)で、安全ピンとおぼしき跡がさび付いている。上に大きく角印が押されているが、残念ながら今では全く読み取ることができない。要するに、治安維持に当たる準軍事的組織なのだろうが、この辺、詳しいことはよく知らない。

この腕章を見るたび、思い出す記憶がある。
これは、10年くらい前になるだろうか、北京のなじみの骨董屋から買ったのだが、私は「清共」の意味が分からず、「清共ってどういう意味なの?」と無邪気に店主に聞いてみた。
そうしたら彼は、おいおい!とあわてた顔をして、「そんな声を出すな」と私をたしなめたのであった。
とんだNGワードだったわけだ。
これがそんなにヤバイ単語とも思えなかったのだが、少なくともこの人にとってはまだ政治的タブーに属する部分なんだなと思った。そして、彼の年齢からして、彼が体験してきたであろう中国現代史の数々の政治的事件を想像したものだ。
あるいは、外国人にそういうものを売り渡すことを、おおっぴらには伏せておきたかったのかもしれないが。