徽章はバッジにしてピン

世界の徽章文化を考察するブログ。というか、バッジが大好き。コレクションを紹介したり、バッジに関する情報を考察したり。実用性皆無、実生活への寄与度ゼロ保障のブログです。

製造地不明 エスペラント(SAT)バッジ

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エスペラントバッジの中に、たまに「SAT」の文字の入ったものを見かけることがあります。
ずいぶん前ことですが、なんの略か?と気になった私は、エスペラント辞典を引いてみたのでした。
たぶんこんな略称なんて出てはいないだろう、と思っていたんですが、バッチリ出ていて、しかもその訳がまたびっくり。「Sennacieca Asocio Tutmonda(略称SAT )全世界無民族協会。Lantiの創設したsennacismo信奉のEsp団体」。

「全世界無民族協会」?! 
はぁ~?なんじゃそらぁ! と思った私はしばらく夢中になって調べたのですが、またここでエスペラント世界の奥深さを垣間見ることとなりました。
この組織名のインパクトは、そのくらいあったのです。凡百のコピーライターでは絶対に出てこないパンチの効いたネーミングの妙というか。
ちなみに、「SAT」は、「サット」ではなく「サート」とそれっぽく読みたいものです。

このSATの信奉する「sennacismo」ってのがなにかというと、これもちゃんと辞書に載っていて、「フランスのLantiの主唱した人類を一体とする民族の区別を否定する無民族主義」とのこと。
おもしろい・・・おもしろすぎるよエスペランティスト・・・ただでさえSFチックな発想が魅力のエスペラントにしても、さらに「民族の区別を否定する」団体まであるとは知らなんだ。

世界最大のエスペラント団体はいうまでもなくUEA(ウエア)ですが、SATも1921年の創設という歴史ある団体(現在もあります)。両団体が対立関係にあるかというとそうでもないようだが、内情の機微は部外者にはうかがえない部分もあるかもしれません。

UEAが主にエスペラントの普及拡大自体を目指す団体に対し、SATは、「全世界の労働者階級の諸目標のために国際語エスペラントを実践的に有用化すること」なのだそうで、エスペラント左派というか、行動エスペラント派というか、そんな感じ(誤解があったらゴメンナサイ。あくまでもイメージということで)。もちろん日本にも組織があります(http://satesperanto.free.fr/j/statuto.html)。

なお、SATの名称の訳には何通りかあるようで、「全世界無民族協会」、「全世界脱民族性協会」、「国民性なき全世界協会」など。日本のSAT自身は最後の訳を用いているようなので、そう呼ぶのが適当でしょう。

世の中、知らないことがたくさんあるなあ・・・とつくづく思ったものですよ。