どうも、「模範劇」という呼称自体からしてすでに文革臭がプンプンのように感じる。「これが模範的芸術です」「これが模範的労働者です」「これが模範的思想です」、とまあ、模範なのはいいが、当時はそれ以外を認めない政治的全体主義に陥っていた、という現実もある。これら模範劇の決まった演目以外、例えば伝統的演目などは事実上、上演不可能だったのだから。
それはまあ置いておいて、では文革中盛んに演じられた「8大模範劇」とはなにか。
京劇では「紅灯記」、「沙家浜」、「智取威虎山」、「奇襲白虎団」、「海港」、バレー劇では「白毛女」、「紅色娘子軍」、そして交響曲「沙家浜」の8つである。
京劇では「紅灯記」、「沙家浜」、「智取威虎山」、「奇襲白虎団」、「海港」、バレー劇では「白毛女」、「紅色娘子軍」、そして交響曲「沙家浜」の8つである。
どれも有名といえば有名なのだが、一番マイナーなのは、交響曲「沙家浜」ではないだろうか。今となっては、一番再演が難しい演目でもあろう。
8大模範劇すべてを視聴したことのある私だが、残念ながらこの作品だけは、今に至るまで映像では見たことがない。だが、それでいて極めて強い印象が残った作品でもある。
(1968年発行の交響曲「沙家浜」切手。指揮者以下、みな新四軍の軍装に身を包んでいる。後ろに見えるのは合唱団。)
8大模範劇すべてを視聴したことのある私だが、残念ながらこの作品だけは、今に至るまで映像では見たことがない。だが、それでいて極めて強い印象が残った作品でもある。
(1968年発行の交響曲「沙家浜」切手。指揮者以下、みな新四軍の軍装に身を包んでいる。後ろに見えるのは合唱団。)
確かにオーケストラなのだが、曲は思いっきり京劇調。楽器の編成も、通常のオーケストラとは異なり、二胡などの中国伝統楽器が混じる。合唱もあって、もちろん京劇の調べを男女混声合唱団が歌うのである。
初めて聞いたとき、オープニングからして、これはスゴイと思った。
文革のスローガン、「古為新用、西為中用(古いモノを新しいモノに活かし、西洋のモノを中国に活かす)」を、音楽芸術に実践した結晶!と思ったものだ。
初めて聞いたとき、オープニングからして、これはスゴイと思った。
文革のスローガン、「古為新用、西為中用(古いモノを新しいモノに活かし、西洋のモノを中国に活かす)」を、音楽芸術に実践した結晶!と思ったものだ。
「交響曲」とはいっても歌劇的要素も強く、当時の雑誌などで写真などで見る限り、ソリストが主要人物を演じながら歌う。もちろん、ソリストたちは役ごとの服装を身につける。この辺も独特な演出様式でもある。内容は、京劇「沙家浜」と同じで、抗日戦争中の新四軍の活躍を描いたもの。