徽章はバッジにしてピン

世界の徽章文化を考察するブログ。というか、バッジが大好き。コレクションを紹介したり、バッジに関する情報を考察したり。実用性皆無、実生活への寄与度ゼロ保障のブログです。

中国 原爆バッジ

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オバマ大統領の広島訪問は、今日メディアで大々的に報じられた。日米それぞれに政治的思惑があったろうが、無事に実現して何よりと思う。何より、被爆地広島の人たちには特別な感慨を持って迎えられたようだ。アメリカにもアメリカの立場というものがある。大統領の広島訪問に反対する意見も根強かったようだが、オバマ大統領としては、核のない世界を目指すという姿勢を貫いてみせたわけだ。任期が残りわずかということも影響しているかもしれないが。

そんなわけで今日は原爆関係のバッジを紹介してみたい。ただし、日本でもアメリカでもなく、中国のものである。

バッジとしては珍しい爆弾型で、「原子炸弾 実現和平 勝利V」の文字がある。
中国語がわからない日本人でも、意味はストレートに伝わる文字である。「原子爆弾が平和を実現した」。
このバッジは、北京にある知り合いの骨董店で入手したもので、見つけた時はそのインパクトに驚いた記憶がある。中国でこんなモノが作られていたのかと。日本人の私としては、原爆関係のバッジといえば、反戦反核のために作られたものをイメージする。ところがそれとはまったく逆の存在、しかも中国製だ。

一見してすぐわかる爆弾型ではあるが、当時のこともちろん正確な原爆の形状は不明であったはずだ。そのためか、この「原爆」は、広島型にも長崎型にも似ていない
もっとも、誰でもわかる爆弾形をしていればいいので、リアルな原爆の形状を模して作る必要自体もなかったかもしれないが。
おそらく終戦直後に作られた記念品であろう。まだ共産党政権が誕生する前、蒋介石の国民党が政権を握っていた頃のことだ。

なにしろ首都南京を初め主要都市を日本に攻略され、遠く重慶に遷都しつつ8年に及ぶ抗日戦争を戦っていた中国である。アメリカが新型兵器でもってその日本を倒したことは、何よりの朗報であったはずだ。
あり得ない想定だが、ナチスドイツがアメリカを降伏させたとき、日本がその勝利に沸いた様子を想像すればいいだろうか。

だが現実は皮肉である。
大陸を共産党に追われた蒋介石は、台湾に落ち延びつつ、今度は反共主義を掲げてかつての仇敵、日本と手を組むことになるのであった。
そして、中国本土を支配した共産党のほうは、原爆の力を思い知ったがために、ほとんど国力を無視した開発にのめり込んでいくのであった。

オバマ大統領の目指す「核のない世界」。しかし核兵器の種をまいたのは、アメリカ自身にほかならない。アメリカが原爆の使用を謝罪しようと正当化しようと、核兵器の威力を世界に知らしめてしまった事実は、取り返しがつかないのである。