海事補佐人、といってどれだけの人がその存在や内容を知っていようか。私もこのバッジを手にするまでは考えたことすらなかったろう。
外見からは何のバッジだかさっぱりわからない。裏面に「日本海事補佐人会々員章」の文字があるためやっとこの正体が判明する。よく見れば、表面の菊花の中央に描かれているのはコンパスらしい。このマークは、海上保安庁の旗などで有名なので、海関係の組織のものと推測できる(しかし少しわかりにくい)。
バッジは使い込まれた痕跡があり、長年この業務に携わった人の胸に輝いていたのであろう。
では、海事補佐人とはなにか。国土交通省海難審判所の公式サイトにその説明がある。
受審人又は指定海難関係人となった方は、審判廷で審判官や理事官などから事故当時の状況を色々と尋ねられます。このとき、その状況を正確に説明できなかったり、自分の思ったことや主張をうまく表現できないことがあります。
そこで、補佐人を利用するとあなたが主張したいことを代わりに説明してくれたり、弁護してくれたりします。
海難審判は、裁判の手続きのような流れで審理が進められます。
海難審判の手続きの中で重要なものとして「証拠の提出」があります。あなたが主張したいことで新しい証拠(書類でも物でも構いません。)がありましたら、補佐人が代わりにその手続きを行ってくれます。
このほか、あなたの正当な権利を保護してくれます。
なるほど、要するに海難事故における弁護士のようなものか・・・と思うところだが、多少異なるようだ。既定の要件を満たす者は登録することができ、特定の試験が存在しないのである。
では、どのような者が登録できるかというと、次のとおり。
1.一級海技士(航海、機関、通信、電子通信のいずれか)の免許を受けた者
2.審判官又は理事官の職にあった者
3.大学の船舶の運航もしくは船舶用機関の運転に関する学科の教授等
4.弁護士の資格がある者
弁護士はともかく、その他の要件がどれほど限定的で難度レベルがどの程度なのかさっぱり見当がつかないが、どうにも縁の遠い存在である。海事補佐人の業務は法律業そのものに見えるが、弁護士資格を除き、登録要件は少なくとも直接関係ないところが不思議といえば不思議である。
実際、海事補佐人に登録者はどのくらいいるものか知りたかったのでいろいろ調べてはみたのだが、はっきりとした情報は見つからなかったのが残念。それなりにレアなものと推測している。