このブログでは、古いものから新しいものまで、さまざまなバッジやメダルを取り上げてきた。まあ日本のバッジ文化は明治時代以降なので、どんなにさかのぼっても150年の歴史しかないのだけど。それでもやっぱり古いバッジは興味深く、いろいろ発見があって取り上げるのが楽しい。
さて、今日の一枚は一見して古い明治期のメダル。裏面を見ると正体が判明する。
「西村山郡小学校生徒 優等牌」
という文字がタガネで彫られている。
成績優秀な小学生に贈られたメダルなのである。それにしても、旭日をデザインしたメダルは、まるで日清・日露戦争期の軍メダルで、パッと見では小学生用とはとても思えない。
西村山郡、というのを調べてみると、明治11年11月に成立した郡区町村編制法により山形県中部に誕生した行政区である。さくらんぼで有名な寒河江市などが含まれていた。当時の郡役所の洋館が寒河江市に移転保管され、今は博物館として利用されているそうだ。
「優等章」ではなく、「優等牌」というのも時代を感じる。「章」も「牌」も、意味としてはほぼ同じでかつて「メダル」などを指す語として「牌」が用いられた。これだけでも時代を感じさせる。
成績優秀な小学校生徒がこの「牌」を贈られたのであろう。このような児童生徒を表彰するメダルは、実は数多く存在する。日常的に身につけるものなのか、それとも何かの行事などの時に限定して使用されたのか。どちらにせよ、どんなに成績が良くても、メダルを贈るという表彰方法は現在の小学校ではまずありえなさそうである。
このメダルの旭日デザインが勲章や軍関係メダルからインスパイアされたのは間違いない。紅白のリボンも、旭日勲章の配色を逆にしたような感じだ。
今から100年ほど前。小学校の試験で優秀な成績を取り、このメダルを胸にした生徒は、学友から羨望の眼差しを浴び誇らしい気持ちになったことだろうか、などと想像を膨らませる。