徽章はバッジにしてピン

世界の徽章文化を考察するブログ。というか、バッジが大好き。コレクションを紹介したり、バッジに関する情報を考察したり。実用性皆無、実生活への寄与度ゼロ保障のブログです。

イギリス ジョージ6世戴冠記念バッジ "The Only Illuminated Badge "(1937年)

イメージ 1

イメージ 2

画像は、1937年イギリス国王ジョージ6世の戴冠記念として作られたバッジ(CORONATION SOUVENIR LITBADGE)である。

1936年に即位したエドワード8世は、周囲の反対を押し切って、人妻であるアメリカ人ウォリス・シンプソンと熱愛。ついには即位1年余りでイギリス国王の座を投げ、彼女との結婚に走ってしまったのだからすごい。
イギリス王室、前代未聞のスキャンダルであった。
そこで、イギリス国王の王冠は弟(ジョージ6世)に転がり込むことになった。ドイツではヒトラー率いるナチス党が政権の座につき、ヨーロッパに不穏な空気が流れていた頃である。
こんな時に、兄の恋愛沙汰から王冠を押しつけられた方も哀れといえば哀れである。元からジョージ6世は体が弱く、吃音症だったという。そして、自身は全く臨んでいない王座に座らされた挙げ句、ドイツとの戦いという国難に立ち向かうことになる。

アメリカで大統領バッジが19世紀から作られてきたのと同様、イギリスでも国王・王妃のバッジはメジャーなアイテムである。一方、日本で天皇の肖像入りバッジというのは少なく、世界的に見れば日本の方が珍しいと思う。
イギリスでも、王室バッジが作られはじめたのは19世紀末、ビクトリア女王時代からである。当時は王室バッジもアメリカ製の輸入品が多かったようだ。イギリスは徽章文化が古くから発達した国だが、安価な大衆向けの缶バッジについては、アメリカの方が先に発達していた状況がうかがえる。

さて、画像のジョージ6世バッジである。これは紛れもないイギリス製だが、バッジの形式は数あれど、これは中でも珍品といえるだろう。"The Only Illuminated Badge "と箱にも書かれているとおり、何と豆電球入りで光るのである。

仕組みは、裏面の画像を見てもらえればわかると思うが、バッジの裏に豆電球が取り付けてあり、そこから細いコードが伸び、ソケットへとつながっている。このソケットを豆電球用プラグにねじ込めば、夜でもビカビカ光る、という仕組みである。

このバッジの「ミソ」は次の2点。
1.バッジは表面の透明樹脂の裏から国王・王妃の肖像写真が貼り付けてあるだけなので、裏からの光を通すようになっている(通常は金属板の上に写真を貼り付ける)。
2.ソケットが電球から離れているので、バッジ自体に電池を仕込む必要がない。ポケットに電池と豆電球用プラグを入れておき、そこにバッジから伸びたソケットを入れる。例えば、電球をはずした懐中電灯などを利用できるかもしれない。

試したことはないが、なにせ70年も昔の電球なので、おそらく切れていると思うが、もし光ればバッジ全体が光を発し、相当目立つこと間違いナシである。
いやー、これおもしろいなあ。ぜひ試してみたい気がするが、たぶん光はつかないだろうなあ。
傷みの少ない箱付きで、しかもコードは紙で包まれたまま。どうやらこれまで一度も光らせたことはなさそうである。
このバッジ、実は日本の骨董市の西洋アンティーク店で見つけたモノ。本では見たことがあったが実物は初めて見たので喜んで買った。しかも安価というのがまたイイ。

世界のバッジの中でもあまり類例が少ない「豆電球入りバッジ」。まあ、正直アイデア倒れの感は否めず、普及しなかったワケもわかるような気もするけど・・・。