徽章はバッジにしてピン

世界の徽章文化を考察するブログ。というか、バッジが大好き。コレクションを紹介したり、バッジに関する情報を考察したり。実用性皆無、実生活への寄与度ゼロ保障のブログです。

「偽バッジで国会議員装い外務省に不正侵入」事件発生・・・について

あるニュースが、私の目を惹いた。

偽バッジで国会議員装い外務省に不正侵入した疑い 容疑者逮捕

偽の議員バッジを着けて国会議員を装い、東京・霞が関の外務省に不正に立ち入ったとして、22歳の容疑者が警視庁に逮捕されました。
逮捕されたのは、東京・品川区の職業不詳、藤本叶人容疑者(22)です。
警視庁によりますと、今月24日の午後5時ごろ、偽の議員バッジを着けて衆議院議員を装い、外務省に不正に立ち入ったとして建造物侵入の疑いが持たれています。
入り口にいた守衛は、バッジを着けたスーツ姿の容疑者を国会議員だと思い込んで呼び止めなかったということですが、その後、不審に思い、防犯カメラの映像を確認したところ、庁舎内をうろつく姿が写っていたため、警視庁に通報したということです。
調べに対し、「バッジはインターネットで買った。偉い人になった気分になりたかった」と供述し、容疑を認めているということです。
また、「同様の手口でほかの省庁にも入った」と供述しているということで、警視庁がいきさつを捜査するとともに、中央省庁に対して注意喚起を行ったということです。(NHK NEWS WEB 8月31日)

・・・なんだこりゃ。

通常、中央省庁の建物に入館するには入館手続きが必要である。受付で氏名や所属、訪問先、目的等を所定の用紙に記入し(記入内容自体はごく簡単なものだ)、身分証(運転免許証でよい)を提示した上で、入館証(カードキー様のモノ)を受け取り、それを使って自動改札のような入口から入るのである。

外務省もおそらく同じはずだが、この人はそういう手続きをせず、一般外来者とは違う入口から入ったのであろう。

にしても、「偉い人になった気分になりたかった」という理由が、聞いて力が抜ける。しかもほかの省庁にも入っていたらしい。いったい何がうれしいのか、よくわからない。

私としては、守衛を欺いた「ニセ議員バッジ」というのがどういうものであったかに関心があった。それでネットニュースで見ていたら・・・あ、これ知ってる。よくネットオークションなどで、演劇用小道具などと称して売っているやつだ。

念のため言っておくと、実際の議員バッジとは全く異なる。外務省の守衛さんももうちょっとちゃんと見抜いてほしいものだと思う。

それに容疑者は22歳の若者。こんなに若いのが国会議員なんて、大体おかしい(衆議院議員の被選挙権はいちおう25歳以上ではあるが)。

それでも、外務省ではどうもこいつは怪しいと通報され逮捕に至ったのだが、この人、ほかの省庁でもおんなじことをして、これまでスルーされてきたらしいから、なんというか日本ってやっぱり平和なんだなと改めて感慨を深くする。

 

ここはバッジ専門ブログなので、どのように違うのか、検証してみたい。
これが容疑者から押収されたニセ議員バッジの画像だ。

容疑者から押収されたニセ議員バッジ


そしてこちらがホンモノ。私が憲政記念館で撮影した展示品の衆議院議員記章である。

衆議院議員記章(ホンモノ)

 

エンジ色の座布団の色は一応似ているものの、ホンモノと一番違っているのは中央の金の菊花部分が座布団から飛び出していることで、私はこれを密かに「デベソバッジ」と呼んでいる。いかにも安っぽいツクリである。一方ホンモノは、菊花部分がほぼ完全に座布団に埋もれている。
また、ニセモノでは座布団部分がつぶれて低く見える(ホンモノはもっと高く盛り上がっている)点でも、だいぶ印象が違う。

国会の警備を担当する衛視は、議会に出入りする議員ほか専門職等の徽章(数十種ともいわれる)を見分けることができるという。おそらく、というか確実に、国会の衛視であればこんな質の低いニセバッジが見逃されることはなかったであろう。

記事によると警視庁では「中央省庁に対して注意喚起を行った」ということなので、公官庁の守衛さんたちもこういう事件をきっかけに、バッジを見極める訓練が課されるのではないか。

 

それにしても、なんなのだろう。
今回捕まった容疑者は、「偉い人になった気分になりたかった」と言いつつ、こんなニセモノバッジをネットで入手するだけでよかったのだ。バッジマニアの私などにはどうもこの心理がわからない。
この人にとっては、「偉い人の気分」を味わうのにデキの悪いニセモノバッジを身に帯びて中央省庁の建物をうろつくだけで満足できるのだ。ある意味安上がりというべきだろうか。

まあバッジマニアとしては、本物バッジを悪用する者が出たりすると迷惑千万だし、バッジを悪用するということ自体に嫌悪感を抱くので、今回使われたのがレベルの低いニセモノでよかったなという気もしないでもない。

ともあれ、いろんな意味でちょっと印象的な事件ではあった。