今年2023年は、関東大震災から100年目の節目の年なのだそうだ(1923年9月1日発生)。つまりこの100年、関東地方にはこれほどの直下地震は発生していない、ということだ。
大陸プレートの微妙なバランスの上にかろうじて乗っかっているわが日本列島においては、地震は避けようのない宿命である。ないに越したことはないが、地震が起こらないということは、そのエネルギーがたまり続けているということを意味している。そう考えてみると、ほどほどの地震がちょいちょい起き続けているという状態のほうがたぶんずっとマシなのだけれど、そんなことを考えたところで、そのような「地震コントロール」をする手段自体が存在しないので何の意味もなく、結局我々は未来永劫、震災におびえながら生きていかねばらないのである。そして、おそらく日頃から震災に怯え続けている人ほど次の震災を生き延びる確率は高いであろう。
このブログでも過去、紹介してきたとおり、私は震災関係バッジには関心を寄せている。というのも、関東大震災は単なる自然災害ではなく、日本社会に巨大なインパクトを与えた歴史的事件だからである。
今日紹介するバッジは、震災後の記念品。関連のイベントで配布されたものだろうか。
「転禍為福(わざわい転じて福となす)」「東京大震火災記念」と、中央にはなぜか七福神の大黒天。帽子をかぶり、打ち出の小槌と袋を手にしている姿からも間違いはなかろう。全体のフォルムは東京都のシンボルマーク(「東」の字をデザイン化)。
裏面には「大正十二年九月一日」の文字がある。
当時は「関東大震災」ではなく、「東京大震火災」と呼称されていたのだろうか。確かに震災の揺れ自体よりも、それによって発生した火災で甚大な人的被害を出したのである。
ここでもう一度よくよく中央の大黒天の姿を見てほしい。
大黒天の典型的な姿は旧一円札に描かれている通り、米俵に腰かけている。
しかし、このバッジの大黒様はどうであろう。腰かけているのは米俵・・・?ではなく、ナマズだよこれ!なるほど、震災記念ならではのユニークな図だ。
そもそもなぜここに大黒天が登場しているのだろう。「転禍為福」の言葉通り、悲惨な災害からの復興を果たして、さらに商売繁盛、富貴栄達を果たしたいという願いなのか。
それとも本来ヒンドゥー教の戦闘神でもあったところから、震災を発生させる根源(その象徴としてナマズ)に打ち勝とうということなのか。大黒様は本来コワイ神様なのである。
と、この2つの可能性を考えたところだが、真相はどうなのだろう。
・・・と、ここまで書いてきて、打ち出の小槌からは小判がこぼれ落ちているのに気が付いた。見れば見るほど、単純に商売繁盛のご利益にあやかりたいだけのような気がしてきた。このバッジからはなんだかずいぶん能天気な印象を受ける。
それにしても、「転禍為福」とは。現代日本では大災害後にこんなことを言ったら不謹慎の誹りは免れないのではないか・・・などとつい想像してしまう。ネットでバッシングされること必至かと。