大方の予想通り、ガーシー参議院議員の失職が決定、メディアでは大きく取り上げられている。
ネット動画業界では有名人らしいが、いまだに私はこの人の配信動画を見たことがない。正直芸能人のスキャンダル問題など関心ないし、何よりこの人の言葉も文章もいやなので見たくないのだ。
なにしろ、ニュースで見聞きする彼の関西弁(兵庫出身らしい)が、とにかく不快だ。私は東北出身家系の関東育ちながら、一時期関西弁文化圏に住み、そのため関西弁には若い頃の思い出とともに強い親しみを覚えている。どうにも彼のことは擁護しがたい。
ともあれ、議会史上的には珍しい出来事ではあった。
ドバイに滞在を続けるガーシー参議院議員に対し、今年1月、参議院議長から登院を求める「招状」が出された。さらに参議院懲罰委員会は、「公開議場における陳謝」を求めることを全会一致で決定。最も重い除名処分もあるのでは、とのうわさもあったが、まずは陳謝を求め、それにも応じないときは・・・とステップを踏むことにしたわけだ。
一時は本人が帰国の意思を表明するなどすったもんだはあったものの、結局予定の3月8日にも帰国せず、この結果をもって、参議院懲罰委員会はガーシー議員の「除名」とすることが決定し、3月15日の本会議において正式に除名案が可決(賛成235,反対1)された。
さて、議員といえばバッジである。
議員資格の失格に伴い、交付された議員バッジ(正式には「参議院議員記章」)はどうなるのかというと、返還の必要はない。今回のケースでも、参議院は「返納を求めない」としている。
議員を不名誉な理由で失職しようと、極端な話凶悪犯罪で有罪となろうと、返還しなくてもよいようだ。当選を重ねた議員のもとには複数の議員バッジが溜まっていく。本人が死んでも返還の義務はない。
ただ、資格のない者が議員記章を帯用することは無効であるどころか、軽犯罪法における「称号詐称、標章等窃用の罪」に該当するとされる。
具体的には、「 官公職、位階勲等、学位その他法令により定められた称号若しくは外国におけるこれらに準ずるものを詐称し、又は資格がないのにかかわらず、法令により定められた制服若しくは勲章、記章その他の標章若しくはこれらに似せて作つた物を用いた者」
ということで、公的な勲章やバッジは、資格なき者が勝手に使ってはいけないのである。
次に、参議院の議員が落選や引退などで議員資格を失っても、「参議院前議員記章」が交付される。期限はないので、一度でも議員になったことがあればいつまでも前議員記章は有効ということになる。似たような制度が都道府県議会や市町村議会にもあり、こちらは「議員待遇者章」という。
参議院議員記章のモール(いわゆるバッジの座布団)はナス紺色だが、前議員記章は緑色である。形状は同じながら、色が全く違うので見分けるのは容易である。
これを帯用することで、議場には出入りできないものの、委員室には入ることができ、公務員席で本会議を傍聴することもできる。
ただ、この前議員記章の交付には、申請が必要である(自動的にもらえるわけではない)。ガーシー前議員には、議院運営委員会は前議員バッジを交付しないことを決定したそうだ。
申請行為なので場合によっては不許可もありうるだろうが、前議員議員記章の交付不許可はかなり珍しいケースらしい。あれだけ登院を要請されながら登院せず失職したのだから、そんな奴には申請されても前議員資格は認めないという意思表示である。