徽章はバッジにしてピン

世界の徽章文化を考察するブログ。というか、バッジが大好き。コレクションを紹介したり、バッジに関する情報を考察したり。実用性皆無、実生活への寄与度ゼロ保障のブログです。

北朝鮮 金日成・金正日バッジ(2種) ~金正恩時代におけるバッジの小進化~

金日成金正日バッジ(2種)

北朝鮮の話題といえば、最近はすっかりミサイル発射問題ばかりになって久しい気がする。改革開放による国内経済力の向上も政治体制の更新も全くなく、通常兵力の拡充に見切りをつけて核開発とミサイル発射能力にのみ集中しているかに見える北朝鮮

父親である金正日の死去に伴い、三代目の金正恩が指導者となったのが2011年12月。すでに11年以上が経過したが、北朝鮮の政治体制は全く変わらず、核とミサイルを用いた瀬戸際外交ぶりがますます目立つばかりで、将来この国がどこに向かうのかまったくわからない。米中対立やロシアとウクライナの紛争といった国際政治力学の中で、妙な存在感を増しているようにすら見えるのだから困ったものである。

さて。北朝鮮といえば有名な金(金日成金正日)バッジ金正恩という新指導者登場により、新たな指導者を描いたバッジが登場するのではと予想され、私も関心を持っていた。

一体どうなったか。たぶん、金正恩バッジの登場はこれまで何度も報じられてもきたが、私は実在しなかったのではないかと思っている。

当ブログでは、過去「金正恩バッジ登場」に関する記事を取り上げてきた。が、その後何年たっても実際に画像付きで報じられた記事が一向に出てこないというのはさすがにおかしくはないか。今思えば、当時の報道は金日成(または正日)バッジを見間違えたのではないかとすら疑っている(記者の北朝鮮バッジへの無知ぶりをこれまでも強く感じてきたせいでもある)。

まあ、生産されたのは事実だがごく少数の限定生産・限定配布で・・・という可能性もなくはないものの、私は疑っている。

なぜかというと、金正恩体制のバッジへの関心のなさをつくづく感じるからである。

金正恩自身、報道写真など検証すれば明らかなとおり、最近ではすっかりバッジをつけることをしなくなった金正恩夫人の李雪主氏もつけないのが常態化したようだ。

何より、金正恩体制になってから10年以上が経過したというのに、バッジの種類がほとんど増えていない実態がある。新体制当初こそ、「金日成金正日」の2人の肖像が並んだ新型バッジが登場し、新たなバッジがこれからどんどん普及していくのではないかと思われたが、その後はぱったりである。

(注意。これも私の北朝鮮バッジの観察力が行き届いていないだけで、実際には未知のバッジが増えている可能性を一応留保しておく必要はあろう。だが事実としては金正日時代に多数の種類のバッジの登場したのとは全く対照的である。)

画像のバッジは、金正恩時代になって登場した「金日成金正日」タイプのバッジである。ここでは2つのバッジを掲載したが、同タイプのバッジには、裏面のツクリなどいくつものマイナーチェンジが確認されている。

さて、この2つのバッジは、上のものが2012年に入手したもので、下が2020年。むろん、いずれも本物と判断している。

パッと見そっくりだが、裏面のツクリもさることながら、オモテ面にも変化がある。まず肖像背景の赤い背景部が、上は普通なのに比べ、下はキラキラと光を反射する。そのため肖像が少し浮き出て見える。

また、旗頭部の形状も異なる。上は棒状に飛び出しているが、下は槍穂状となっている。

旗頭の形状については、これまで金日成時代から連綿と続く「党旗型」、または総連系「国旗型」バッジでもこのようにはっきりとした槍穂の形をしているものはない。

そのため、槍穂型の登場は比較的最近登場した旗型バッジにおける「進化」と考えてよい。背景のキラキラ赤も同様、このような色をしたものはない。

まあこのようなマイナーチェンジは確認されるものの、新たなタイプのバッジが普及している様子は全くなく、やはり金正恩体制のバッジに対する関心の希薄さがうかがえるのである。

テレビなどで映される北朝鮮国内の様子を見る限り、依然として人々は金バッジを胸につけている。ただこの政権のバッジへの関心の希薄さは、やがて少しずつ国民にも広がっていくのではないかということを予感させる。