先日、北朝鮮の金日成・正日バッジについての記事を投稿したところだ。
この「肖像バッジ」という政治的アイテムについて、私は昔から強い関心を抱いていて、21世紀の現代にあってもそれを国を挙げて制度化している北朝鮮に対してもそういう観点からウォッチングしてきた。
ソ連のレーニンバッジ、中国の毛沢東バッジなど、20世紀の社会主義国家では指導者の神格化、忠誠の証として肖像バッジが用いられてきた。北朝鮮の肖像バッジも同じ路線である。
だがもっと根本的に、この「肖像バッジ」というものはそもそも何なのか。なぜ他人の肖像が描かれたバッジを、人は佩びるのか。さまざまな勲章でも、建国英雄を描いているケースは非常に多いではないか。
以前、『キャサリン妃、豪華なティアラより「記章」に注目が集まる』という記事をネットで見つけてそんなことを考えていた。
これは、昨年、約8年ぶりとなるアメリカ外遊を終えて帰国したばかりの英王室のウィリアム皇太子と妻のキャサリン妃が、2022年12月6日、バッキンガム宮殿で行われた外交団歓迎レセプションパーティーに出席したときの記事である。
2022年9月に逝去したエリザベス女王が描かれている。
ちなみに、エリザベス女王の肖像画が描かれた記章には、ロイヤルファミリーオーダーという正式名称がある。ロイヤルファミリーオーダーは、君主から、王室の一員として国のために貢献したと認められた女性のみに与えられるもので、公式行事で身につけられることが多い。
北朝鮮のアルミ製バッジと比べるのもなんだが、なんとまあ豪華であることか。さすがに勲章制度を極めたイギリスという感じがする。肖像は七宝製、彩るキラキラした宝石はダイヤやルビーなのだろうか。
「ロイヤルファミリーオーダー」という名前があって、与えられるのが国に貢献した女性のみというのも独特だ。
私が考えているのは、行きつくところ、人類が普遍的にもっている不思議な感覚である。
ジェームズ・フレイザーが説くところの「類感呪術」というのがある。思い切り簡単に言うと、「類似したもの同士は互いに影響する」という発想からくる呪術である。原始的な呪術と捉えられがちだがそうではない。
現代に生きる我々だって、親しい誰かが写った写真を破いたり、雑に捨てたりすることにためらいを感じはしまいか。逆に、ファンが好きな芸能人のブロマイドを単なるアイテム以上に大事に扱ったりするのではないか。
この「類感呪術」につながる感覚こそが「肖像バッジ」の本質であろう。偉大な人物の肖像を身に帯びることで、その偉大な能力を共有し、彼が属する集団性をさらに高めるのである。現生人類の不思議な習性と言えよう。
それにしてもスゴイね、この「ロイヤルファミリーオーダー」のゴージャスさは。