徽章はバッジにしてピン

世界の徽章文化を考察するブログ。というか、バッジが大好き。コレクションを紹介したり、バッジに関する情報を考察したり。実用性皆無、実生活への寄与度ゼロ保障のブログです。

アメリカ グレーンジ(農民結社)バッジ

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アメリカの結社は非常に多種多様でおもしろい。
グレーンジ(GRANGE)は、もともと農民主体の結社で、日本でいう農協的な一面もあるが、位階制やさまざまな儀式なども持ち合わせていて、その点、趣がずいぶん異にする。
少なくともわが国の農協では、組合員になるのに「親方」や「監督官」による入社儀式などはないし、さまざまな不思議なシンボルを伴った位階制なども存在しないのである。・・・いや、あったら楽しい気もするなあ。

グレーンジは、別名「農民のパトロン」とも言われる農民による農民の組織で、成立は1867年。会員が増え、政治的にも力を蓄えてくると農民以外の職業の会員も加わるようになったという。今も全国的に有力な組織だそうだ。

アメリカの結社は通常男女別に作られることが多い。フリーメーソン(男)にはイースタンスター(女性)があり、オッドフェローズ(男性)にはレベッカ(女性)がある、というように。
だが、グレーンジは男女共通の組織で、夫婦を単位に加入することになっているそうである。この辺もユニークで組織の性格を物語る特徴であろう。

綾部恒雄著「アメリカの秘密結社」(中公新書)には、第1位階の儀礼の文句が一部紹介されている。「親方」や「監督官」「執事」などというのは、この組織の役員名である。

親方:高貴なる監督官よ、入り口で警報が鳴っているようだが。
監督官:誰が近づきつつあるか見てきなさい。
執事:誰が来たのか。
執事助手:男と女が雇われたいと望んでいます。
執事:強制されたのではなく、自分の意志で来たのか。
執事助手:そうです、自分の意志です。
執事:彼らは立派な人間だと証明されているか。
執事助手:証明されております。
・・・音楽が奏でられ、男女の候補者が定められた線に沿ってホールに入ってくる。

なんとも不思議な儀式だが、まあ結社の儀式というものはそんなものかも知れない。

前書きが長くなってしまったが、バッジは1918年のニューヨーク州のグレーンジバッジ。SYRACUSEは地名と思われる。さすがに農民結社らしく、シンボルは農具や植物が用いられる。大きな鎌や、鋤や熊手などが描かれている。
特に上部の鎌がよく目だって、一見コミュニスト関係のバッジみたいだ。ちなみに、ピンはこの鎌の後ろに付いていて、下の丸い部分が鎌からぶら下がる。

斬新なデザインで、とてもよくできている。
グレーンジも多数バッジを製造していて、この他にも何点か手元にある。今後また紹介することもあるだろう。