徽章はバッジにしてピン

世界の徽章文化を考察するブログ。というか、バッジが大好き。コレクションを紹介したり、バッジに関する情報を考察したり。実用性皆無、実生活への寄与度ゼロ保障のブログです。

中国 ある意味衝撃的な「泉州晩報」(福建省地方紙)の掲載記事

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中国福建省泉州市で最大の地方紙「泉州晩報」に、こんな記事が載っていた(2011年7月11日版)。
それがある意味衝撃的だったので、ぜひ紹介させて欲しい。

退役老兵のお宝探し 数百枚のバッジを収集」という見出し。
今年68歳の元兵士、許栄源はひょんなことから様々な部隊勲章や記念章を集めだし、およそ半年の間に300枚以上を集めた」・・・というものだ。

記事の概要を紹介しよう(ヘタな訳はご愛敬)。

・・・
若い頃は厦門重機関銃手をしていた許栄源。今では隠居生活を送っているが、今年、たまたま露天のノミの市で朝鮮戦争時の中国志願軍の奨章(メダル)を発見。値を聞くとわずか30元!(400円強)。志願軍の奨章がこんな露天でたたき売りされているということに衝撃を受けた彼は、すっかり落ちぶれたこれらのメダルを救うべく、収集を決意したのである。
以来、あちこちに出かけては奨章や記念章を買い集め、その影響で多くのご近所さんやかつての戦友も収集に参加するようになった。
彼が、かつて淮海戦役に参加したことのある張さんに「華東野戦軍奨章二等功」を見せたとき、張さんはかつて自分がもらったこの奨章に感動し、なくしてしまったことを惜しんだ。彼は、張さんの慰めになるようにと快くこの奨章を譲った。
コレクション中、もっとも古いものは1923年の「江岸京漢鉄路工会証章」で、紅星奨章、解放勲章なども所有している。
許栄源は語る。「私はこれらの勲章で、若い人に過去を忘れないよう、血を流して戦った先人を忘れないよう、特に栄光ある伝統を忘れないよう、教えたいのです」。
・・・

話としては、まあいいのだけれど、画像を見てほしい。
これ全部ニセモノだよ!
いや、レベルが低すぎてニセモノというより、とびきり程度の悪いオモチャレベル! かろうじて、「一応ホンモノっぽいな」というモノすら1枚も見えない。もう最低だこのコレクション。

そう、この画像と記事のギャップが衝撃的なのだ。

だいたい、このブログでも今までさんざんぼやいてきたように、今や中国のバッジ・メダルの高騰ぶりは目を覆うほど。金の保管場所にも困っている中国のニューリッチならいざ知らず、市井のじいさんがホイホイ手を出せるようなシロモノじゃない。その辺の市場を回って、わずか半年で勲章やメダルを300枚以上集めるなんて、まず不可能である。
だいたい、イマドキ志願軍奨章(抗美援朝記念章かなにかか?)が30元ってことはない。このお年寄りが知らないだけで、落ちぶれるどころか今やバブルの勢いで相場は上昇中である。どうか安心してもらいたいものだ。
記事には他にも、許さんが「抗日戦争奨章のセットを2000元(2万6~8千円くらいか)で買ったことがある」などということも書いてあるのだが、これも安すぎ。モノにもよるとは思うけど、抗日関係の奨章なら、2000元程度じゃまず1枚も買えないのでは。

それにしても、記事に登場する許さんも張さんも、元兵士の割には勲章や奨章に無知なのには驚くばかりだ。張さんなんて、昔のこととはいえ実際現物をもらったことがあるわけでしょ? こんなどうしようもない低レベルのオモチャを、なんで見間違えられるか全く信じがたい。
まったく、許さんが言うとおり、若者たちにはいい教育になるだろう。「栄光ある伝統」を学ぶよりも、事実を知ることのほうがもっと重要なのだと。

それと、近所の人や戦友まで影響されているらしいが、大丈夫なんだろうか。こんな記事が出回れば、許さんだけでなく、周囲の人の耳にも、あれはニセモノだという声がきっと聞こえてくるだろう。遠からず真相に気がつくはずだ。そのとき、彼らの人間関係にヒビが入るんじゃないかと心配だ。

一番ひどいのは、この記事を書いた記者と掲載した編集かも知れない。こんな記事を平然と書く記者のヘッポコぶりにも恐れ入って二の句が継げない。掲載された写真でも、許氏コレクションのダメっぷりはこれだけでも十分判明してしまう。後々問題にならないだろうかこの記事は。

まあなんにせよ、いろいろとツッコミどころが満載過ぎてどうしていいのかわからない記事である。しかし冷静に考えてみれば、われわれ日本人でも自分の国の勲章の実像をどれだけ知っているのかとか思い返すべきなのかもしれない。

いやー、それにしても、ちょっと驚くべき記事ではあった。