徽章はバッジにしてピン

世界の徽章文化を考察するブログ。というか、バッジが大好き。コレクションを紹介したり、バッジに関する情報を考察したり。実用性皆無、実生活への寄与度ゼロ保障のブログです。

北朝鮮 メルカリで金日成バッジ販売詐欺事件!?

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(注:私の金バッジクレクションから。オリジナル画像です)

たまにはネットで最近の北朝鮮バッジ情報でも検索するか・・・と見ていたら変な情報を見つけた。
「メルカリで「北朝鮮バッジ」が大量出品の謎!?」

メルカリは最近話題なので私もこの前登録してみたけど、ほしいものが全くないので全然使えないことがわかったばかりだ。
それはさておき、この記事の中に驚くべき内容があった。




「大量出品の裏で詐欺事件も? 被害者が怒りの告発!」

「詐欺師にやられかけた!」というのは、別のマニア男性。金日成バッジの裏に「朝鮮労働党第六回大会記念」と刻印されたレア物が1万1,000円で出品されていた。マニア男性は即決価格で入札したが、商品画像は別のサイトからの盗用、実物は中国製のインチキと判明。だが、「落札と同時にカード決済になるので、後の祭り。出品者にクレームを入れたところ『画像は参考用と断りを入れていた。よく読んでないアンタが悪い』と開き直った」という。



(注:強調文字はこちらで入れたもの)


「詐欺師にやられかけた」というより、これだと完全にやられているのではないかと思うのだが、それより気になるのが「商品画像は別のサイトからの盗用」のくだりで、へぇそんなの載せてるサイトがあるんだ・・・と思って画像見たら、オイオイこれオレの画像(このブログです)じゃねーか!

朝鮮労働党第6回大会記念の金日成バッジ(1980年)」(2016年5月4日)で掲載している2種のバッジの裏表画像そのまんまである。
このブログで掲載している画像のほうがオリジナルであることは、2つのバッジともコレクションケースにそのまま残っているので、見せてみろと言われれば容易に証明できる。


出品者による商品紹介では、次のように書かれてあった。


朝鮮民主主義人民共和国の人民なら必ず持っている、金日成バッジ。
今回の商品は、日本国内で出回っている朝鮮民主主義人民共和国のバッジの中でもレアなもので、朝鮮労働党第六回大会のものになり、1980年代の金日成バッジとなります。北朝鮮国内でもレアなものとなっていると思います。
年数が経っているため、中に気泡が入っています。ご了承ください。

※一枚目の画像では、金日成バッジの説明のものであり同商品ではありません。二枚目のものが商品となりますので個数は一個限りです。」




・・・まあ一応、※以下で参考画像の旨は説明してあるが、なんで商品そのものの画像もあるのにそれとはまったく別の画像を載せる(しかも1枚目として)必要があるのか。不自然である。

それと説明文中にある「年数が経っているため、、中に気泡が入っています。」というのもヘンである。
経年変化で気泡が入る金日成バッジなど見たことがない。もし気泡が入っていたとすれば、それはそもそものツクリ自体が違っている。私ならこの一文で偽物を確実視する。

実際に販売されていたのは、裏面無字の単なる金日成の党旗章のニセモノであったようで、落札者からすれば画像と実物は全然違うじゃないか!詐欺だ!となったわけだ。
どうやら出品者の言い分は、「出品物は1980年の6回大会と書かれているバッジと同じ党旗バッジであり、したがって文字はないが出品物も1980年代の6回大会のバッジである」ということらしい。

しかしそれはおかしい。
金日成の党旗型金日成バッジは、80年代以降広く使われていたかなりポピュラーなタイプであり、党旗バッジ=「6回大会バッジ」ということではない。文字のないタイプのほうが圧倒的に多いのだ。

なぜ文字があるものとないものがあるのか。想定されるのは次の2つのケースだ。
①6回大会記念として(文字あり)党旗バッジが初めに作られ、大会後も同じ型の(文字なし)バッジが通常用として一般化しそのまま定着した。
②すでに通常用として作られていた(文字なし)党旗バッジと並行して、全く同型の(文字あり)大会記念用が作られた。
このどちらかであろう。私は実は前者のケースを疑っているのだが、真相はわからない。

製作年が特定できるところがこのバッジの史料価値がある(そのことについてはブログ中でもすでに書いてある)。字がない以上、製作年やその目的を特定することはできない。

なにしろ、金日成バッジの製作の実態、その歴史的経緯も含めての情報は、今もほとんど入手できていないのではないか。だれがいつどのような理由で作り始め、社会的制度として定着し、どのような種類がいつ、どのくらい作られ使われてきたのか・・・。
役に立たないウワサ話ばかりで、全然わからないままだ。

しかし、このバッジのように、金日成バッジには何種類か確実に製作年を特定できるものがあり、それは断片的ながら、動かぬ証拠となっている。それらを時代順に並べることにより、この世界的にも珍妙な政治的アイテムの変遷が、おぼろげながら明らかになる。
ささいなことながら貴重な情報なのである。

私がこれらの金日成バッジを買ったのは、90年代の中国であった。

私はそれ以前から金日成バッジに興味を持っていたが、日本国内で入手できたのはごくわずかな種類だけであった。それが、当時訪れた中国でいきなり多種多様な金日成バッジに出会ったのだ。
集めるうち、裏面に文字があるバッジの存在に気が付いた。それがこの党旗バッジだ。金日成バッジの裏面に文字があるとは発見であった。しかし、それはどうも例外的存在らしいこともすぐに分かった。

落札者の人も、きっと金日成バッジに関心のある人なのであろう。
それにしても、これ1個で11,000円か。うーん、これでニセモノつかまされたら、私なら一晩は胸のムカムカが治まらないかもしれないなあ・・・。

このブログも変なところ(詐欺に?)で活用されているものである。
見てる人は見ているものだなあと変なところで驚かされた。