徽章はバッジにしてピン

世界の徽章文化を考察するブログ。というか、バッジが大好き。コレクションを紹介したり、バッジに関する情報を考察したり。実用性皆無、実生活への寄与度ゼロ保障のブログです。

中国 2022年北京オリンピックメダル

なんと、もう来週には北京冬季オリンピックが開幕する。

この夏には混乱の中で東京オリンピックが1年遅れで開催されたばかり。たった半年しかたっていないのだから、えっまたオリンピックが始まるんだっけ?とみんな思ったとしても自然な感覚だろう。

そして今回もまたコロナウイルス感染対策を厳重に講じながらの大会となる。まったく、コロナウイルスはどれほど世界に影響を与えるのだろう。これもオリンピック史上前代未聞のことである。

さらに中国国内の人権問題を巡って国際的な批判も大きく、「外交的ボイコット」なる新アイデアを繰り出して欧米諸国が今大会に対する距離を取るなど突き放した対応を取った。わが日本もそれに追随・・・というかまた微妙な態度。

どうなるんだこの大会は、と私などは逆に気になる。

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北京2022冬季オリンピックメダル(表面)

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北京2022冬季オリンピックメダル(裏面)

さて、昨年10月、大会組織委員会は開催100日前にオリンピックメダルを発表した。今日はそのデザインを見ていきたい。当ブログ恒例のオリンピックメダル紹介コーナー。ついこの前やったばかりのような気もしているが。

 

画像を一見して銅鑼か?・・・と思ったら大外れ。

オリンピック公式サイトによると、

北京2022メダルの名前「同心」(中国語で“心を一つに団結する”の意)は、5つのリングと中心のロゴで構成されている。このデザインは、古代中国の翡翠の同心円ペンダントをベースにしており、5つのリングは、人々を結びつけるオリンピック精神と、冬季オリンピックの素晴らしさを世界中で分かち合うことを表している。

 

金・銀・銅メダルの形状は、BOCOG(注:オリンピック大会北京組織委員会のこと)の理念である「合理的で安全かつ素晴らしい」オリンピックを目指し、シンプルでクラシックなものとなっており、2008年の夏季大会で使用された翡翠を使ったメダルに似ている。まさに、史上初となる夏季と冬季の両オリンピックを開催する「デュアルオリンピックシティ」を体現したメダルとなっている。

 

「古代中国の翡翠の同心円ペンダント」?・・・中国語を英訳して日本語に再翻訳するとこういう表現になるのか、要するに「玉璧」のことである。なるほどペンダントといえばそうなるのか。

 

さらに裏面には天体図のようなものが描かれているのも印象的だ。

メダルの裏面には、古代の天文図をモチーフにした24の点と幾重にもなった円が描かれ、果てしなく広い宇宙と人、自然の調和を象徴するほか、第24回冬季五輪において、選手が美しく光る星々のように、歴史に輝かしい章を刻むことを願う思いが込められている。(人民網日本語版 2021年10月27日)

と、こちらも古代モチーフ。

 

全体的な印象でいうとなんかオーソドックスというか、常識的な感じといっていいであろうか。

これまで冬季大会メダルはしばしば前衛的だった。長野大会(1998年)では漆塗、トリノ大会(2006年)ではドーナツ型、バンクーバー大会(2010年)では波打つ型、ソチ大会(2014年)では透明パーツ入り、等々。

今回の北京大会はどんな気合の入ったすごいのが・・・と内心身構えていたら意外におとなしかった。公式サイトで「シンプルでクラシックなもの」といっているとおりである。

デザインを見ると、表面は中央が盛り上がった凹凸が刻まれていて、裏面は平滑である。これならどちらがオモテ面か一目瞭然だろう。

 

なお、2008年の北京オリンピック(夏季大会)では、メダルの裏面に本物の翡翠がはめ込まれた大胆なデザインが採用された。翡翠、好きなんだなあ。

badge-culture.hatenablog.com

この辺、中国が世界に対する誇りたい「アイデンティティ」が何なのかというのが伝わる気がする。

 

私は前から近現代の中国革命史に強い関心を持っていた(このブログにもその志向がにじみ出ている)。中国では、かつて革命こそが中国の誇るべきアイデンティティであった。

1970年代のこと。日本で京劇公演が行われたことがあった。京劇といえば日本人にもなじみのある伝統芸能である。一流劇団が演じる本場の京劇を見ようと、多くの観客が集まった。

ところがそこで上演された演目は「智取威虎山」。国共内戦期の中国東北地方を舞台に、解放軍が凶悪な土匪を退治するという、文革期の代表的な革命京劇である。軍服を着た解放軍兵士がヒーローとして活躍するアクションもので、絢爛豪華できらびやかな舞台を期待していた日本人観客はあっけにとられた・・・という話を、どこかで読んだことがある。

 

今、オリンピックという世界最大のイベントを迎えて、中国が世界に見せたいモノとは何だろう。革命バンザイ史観などというものは、彼らはもう見せようとも思わないのである。「世界が期待する中国」がそれでないことは、彼らもよく知っている。そこで出てくるのが古代中国であり、パンダ(今回のオリンピックマスコット)なのだ。

 

ではわが日本は?私が印象的だったのは開会式で流れたのはゲームミュージックである。おどろおどろしい古代も国粋主義もなく、軽いポップなサブカルチャー世界。

私はむしろあれでよかったのじゃないかと思う。オリンピックなど、所詮はただの(金のかかった)運動会じゃあないか。