徽章はバッジにしてピン

世界の徽章文化を考察するブログ。というか、バッジが大好き。コレクションを紹介したり、バッジに関する情報を考察したり。実用性皆無、実生活への寄与度ゼロ保障のブログです。

日本 夕張市 市政功労章

夕張市 市政功労章

夕張市表彰規則」(昭和47年4月1日 規則第8号、平成20年2月1日施行)では、「第2条 表彰は、功労表彰及び善行表彰の2種とする。」とされていて、「市政功労」という名称は現在はない。平成20年より前にあった名称が、変更されたのかもしれない。

バッジの六角形の図案が、「夕張市」である。昭和12年に制定されたもので、市の総規によると、「外側の6角模様は黒ダイヤを象徴し、中の文字は夕張の「夕」を図案化したものである」とある。
市の総規に「石炭」ではなく「黒ダイヤ」とあえて書いてあるあたり、時代を感じる。

石炭なくして夕張の繁栄はなかった。1960年には最大人口11万7千人となり、絶頂期を迎えた。しかし、時代は変わった。石炭から石油へのエネルギー革命、それに次ぐ鉄鋼不況により急速に衰退し、最盛期には26あった炭鉱が、1990年にはすべて閉山した。

2024年の市人口はなんと6千人、実に95%に近い減少率なのだから恐ろしい。そして減少傾向は今後も継続することが確実視されている。

夕張市は炭鉱閉山による経済低迷を打開すべく、「炭鉱から観光へ」を合言葉に、大規模な観光開発の投資を行っていった。身の丈に合わない投資は莫大な借金を生み出し、市はヤミ起債や粉飾決済まで手を染めた挙句、2007年には全国の自治体で初の財政再建団体となった。

この相次ぐ観光への投資の失敗は、まるで負けを取り戻そうとして転落していくギャンブラーの姿である。

画像の市政功労章は、市章を中心に青と緑と白の七宝で彩色され、裏面には純銀の刻印と、「夕張市」の文字がある。

一体このバッジの受章者は、いかなる功労により表彰されたのだろうか、と思う。もし議員や市特別職の永年勤務が表彰されたものだったとしたらどうであろう。なんとなく、この市政功労章は何となく悲しくも皮肉に見えてしまう。

財政再建団体となった夕張市は、行政サービスを徹底的に削り、そのため人口の一層の減少と住民の高齢化に拍車をかけた。

だが、我々は夕張市のことを笑えるだろうか。もしかしたら今の日本は国全体で夕張市と似たようなことをしているのではないか…。なんだか暗澹とした気分になる。

いつか行ってみたい町のひとつである。