徽章はバッジにしてピン

世界の徽章文化を考察するブログ。というか、バッジが大好き。コレクションを紹介したり、バッジに関する情報を考察したり。実用性皆無、実生活への寄与度ゼロ保障のブログです。

中国(清朝) 2等双龍宝星勲章

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勲章という制度自体がヨーロッパの伝統なので、その他の地域においては近代に入って「真似」して導入されたものだ。もちろん日本もだ。
制度上は日本の民族衣装である和装には、勲章をはつけてもかまわないことになっているのだが、そもそも物理的につけられるようにできていないのである。無理してつけてみても、正直似合うとはとても言い難い。やはり、勲章をつけるなら洋装に限る。始めからそのようにできているんだからしかたがない。

さて、そのような事情は中国でもまったく同じであって、西洋との外交的交流によって必要に迫られ、勲章を制定したのは清朝も末期になってからである。
清朝のシンボルはなんといっても「龍」なので、清朝の代表的勲章であるこの勲章の名も「双龍宝星勲章」という。外国人にも多く授与されたので、有名な勲章である。

画像はこの双龍宝星勲章の、おそらく2等の、正章のほうである(綬に下げる正章と、胸につける副章からなる。正章より副章のほうがずっと大きい)。
名前からして、えらく時代めいた印象を受けるが、デザインのほうもなんだかやっぱり前近代的なのであった。

全体に5弁の花のような形状をしていて、材質は銀で、金メッキが施されている。
中央の丸いオレンジ色の部分はサンゴで、その上部にも赤く凹んだ部分があるが、本来はここにもやや小さいサンゴが入っているはずなのだが脱落している。
勲章の名が示すとおり、中央部を囲むように2頭の金色の龍が浮き彫りになっている。この龍の打刻技術は見事だ。龍は彫りは深く、細部までシャープに表現されている。よーく見ると、龍の目にも青い七宝が施されている。

この前のブログで、中国七宝の色についていろいろ書いたが、この勲章に見える青、水色、紫の3色は特に古いバッジ類でよく見る。この色彩は、その後中華民国時代の初期にもしばしば見受ける。七宝は本体には細く彫られた溝に施されていて、綬に通す金具の部分には直接盛りつけられている。どちらも盛りつけた七宝は研磨されていないので、モコモコとした表面になっている。

うーん、久しぶりに詳細に見たが、なんて複雑なツクリなんだろうと改めて感じた。重厚さと老熟を尊ぶ清朝の文化の香りがこもっているような気がする。
まあそこに魅力がある気もするが・・・

中華民国にはいると、一転欧米風デザインと中華風デザインが混然となった勲章が誕生し、これもまた独特の味わいがあっておもしろいのだが、清朝時代とはまったく別の感覚で、共和主義の新国家の雰囲気を感じることができる。
その代表が嘉禾勲章。これもまた別の意味で素晴らしい勲章である。

これら勲章を比べてみると、時代感覚の差というものの大きさを考えさせられる。