徽章はバッジにしてピン

世界の徽章文化を考察するブログ。というか、バッジが大好き。コレクションを紹介したり、バッジに関する情報を考察したり。実用性皆無、実生活への寄与度ゼロ保障のブログです。

イタリア フィレンツェにて モザイク工芸の粋! ~イタリア旅行編その5~

イタリアでは、昨日も書いたように、残念ながら目を見張るような徽章文化には触れることはできなかったのだが、その他のことでは実に感心したものがある。
つまり、石の文化だ

むろん、建築物は言うに及ばない。古代ローマ遺跡の、石造物の圧倒的な量には、感心するよりもはやあきれるばかりだ。秘密結社フリーメーソンは、石工たちの組合から始まったとされるが、こういう文化を基盤にしていることを思えば、何となく分かる気もする。いかに膨大な労力が注ぎ込まれてきたことか。

もっと細かい石の工芸品にしても、その巧みさには舌を巻く。昨日紹介したカメオみたいなものももちろんそうだ。
他には、例えばモザイクである。建物の床や壁面を飾るだけでなく、装飾品にもその技術は活用されている。

この画像を見てほしい。
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これは、フィレンツェメディチ家礼拝堂 Cappelle Medicee(17世紀建造)で見た祭壇の下部である。
美しい色大理石で作られた祭壇を飾るのは、絵に見えるが、すべて、コレ実はモザイクである
色の異なる石を切り合わせて絵を描かれている
遠目には分からないが、近づいてみるとその細かさ、石の色調の活かし方の巧みさに驚く。
世間では、俗にこれをフィレンツェ・モザイクなどともいうようだ。

世界的に有名なアカデミア美術館。その近くにあ?b>貴石加工博物館 Museo dell' Opifico delle Pietre Dure?br /> ここはそういった石の工芸品などを公開している。
イメージ 2

これはテーブルだが、描かれている草花、鳥、すべて天然の色石を使って表現している。わかるだろうか? 微妙なグラデーションは、それぞれの石のパーツに色のグラデーションが入り込んでいる部分を使っているのだ。
表面は鏡面のように平らに磨き上げられていて、まったくスゴイの一言。また、石を使っているので天然石の色合いが微妙な味わいを醸しだし、何とも言えない美しさを醸し出す。
いや、ホントはもっとすごい作品もたくさんあったのだが、あまりに巧みすぎ、写真では逆にそのすごさが伝わらないのが残念だ。
博物館ではその作成方法も展示されていたが、実は製作方法は至ってシンプルなのだ。下絵を描き、それにしたがって、各パーツに必要な色の石をその形どおりに糸ノコで切り取り、パーツを組み合わせ、表面を平らに整え・・・が、そのこと自体がすごい。膨大な時間と手間がかかることだろう。

どのパーツにどの石を使うかという選択がキモのように思うが、展示されているサンプルの石だけでもすごい量だ。職人はこうした多くの石の中から必要なものを選択し、かつそこから必要な部分を切りとって使うのだ。
イメージ 3

(壁に掛けられているのは石のサンプル。手前の道具は石を加工する各種の道具)

さて、こうしたモザイク工芸品は、装飾品の分野でも遺憾なく発揮されている。ローマン・モザイクという名もあるが、細かい色ガラス質の片を細かく並べて絵を描く工芸があって、これでブローチなどを作るのである。
この名品が先にも紹介した銀器博物館にも展示されていたので紹介する。

モザイクは細かければ細かいほど一般に高価とされている。もちろん、最も重要なのはその絵の美しさだが。
イメージ 4

制作年は不明だが、縁の飾りがいかにもアンティーク調。名刺を半分に折ったくらいの大きさのブローチである。
よく見ると、小さな四角いモザイクの粒々が見えるが、わかるだろうか。
遠くにうっすらと見える山々、街の家並み、そして野に働く人々の姿が、細密なモザイクで美しく描かれている。
まったく、製作のことを思うと、気が遠くなる作業である。