徽章はバッジにしてピン

世界の徽章文化を考察するブログ。というか、バッジが大好き。コレクションを紹介したり、バッジに関する情報を考察したり。実用性皆無、実生活への寄与度ゼロ保障のブログです。

イタリア イタリア共和国功労勲章 ~イタリア旅行編その12~

しつこく続くイタリア編。
今日もローマのノミの市でゲットしたブツを紹介する。

古いポストカードなどを並べている店があって、そこで見つけたのがこれ。今回の旅行における最大の収穫品。
ここまでイタリアでの収穫が全然なく、極限まで(バッジに)飢えに飢えていた私の目に飛び込んだときの気分もご想像いただきたい
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実はこの勲章、何となく見知ってはいた。
だが、名称までは覚えていないし、イタリア勲章のケース付きフルセットも見るのも初めて。
私は慎重にブツのチェックを行った。怪しげなノミの市で、真贋を判断する冷静さは失わなかったわけだ(笑)。というか、もうこれはブツを手にしたときの習性みたいなもの。
「Posso vedere?(見ていいですか?)」と片言のイタリア語で店主に断り、ブツを改めさせてもらう。
(ヨーロッパでは、無断で手に取ったりするのはマナー違反とされていると聞いたことがあったので、この辺はちょっと気を遣った)
ケースの蓋にある国章で、どうやら戦後のものらしいことがわかる。本章、リボン、ミニチュアメダル、2種類の略綬、そしてケース。すべてオリジナルだと判断。
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(勲章のケース。現在のイタリア共和国の国章がある。「REPUBBLICA ITALIANA」とある)

本章のほうは、首に提げるリボン、王冠の鈕、4羽の鷲に囲まれた白い十字、その中央に金の五角星、というデザイン。意外なことに、この勲章、裏面から見てもまったく表面と同じツクリ。完全に両面仕様になっているのであった。

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(本章の本体部。裏面もまったく同じ形)

近くでマジマジと見ると、鷲の造形や五角星のツクリの甘さがやはり気になる。十字の先についた玉も、とりあえずヤスリで形を整えときましたという痕跡アリアリのいびつさ。
全体にちょっと難があるな・・・というのがコレクターとしての正直な感想だ。この辺のツクリからも比較的新しいものであることが想像できる。

しかし不思議なもので、細かく見ればアラは目立つものの、勲章というものは、ケースにフルセットで収まると、なぜかすごくキマッて見えるものだ。アリガタミが倍増するというか。本章単独だったら魅力も半減どころではすまない。
ミニチュアメダルも本章同様、ちゃんと両面に作ってあったりするところはちょっと可愛い。

さて、帰国後さっそく調べてみると、あっさり正体は判明した。その名は「イタリア共和国功労勲章(Ordine al Merito Della Repubblica Italiana)」。
外国人にも授与されるかなりメジャーな勲章のようである。この勲章は6階級あって、私が手に入れたのはコメンダトーレ級(Commendatore)。最上級のCavaliere di gran croce decorato di gran cordone(頸飾章)を一等とするなら、四等に相当する。

日本人の受章者はたくさんいる。
映画監督の黒澤明は カヴァリエーレ・ディ・グラン・クローチェ級(Cavaliere di gran croce、二等)、あの池田大作はグランデ・ウフィチャーレ級(Grande ufficiale、三等に相当)、サッカーの中田英寿はカヴァリエーレ級(Cavaliere、六等)をそれぞれ受章しているそうである。

その中で私が注目したのが、作家・塩野七生が、グランデ・ウフィチャーレ級を受章していることだ。
なんとなれば、私がイタリアに行こうと思ったのも、学生時代以来、私がその作品を愛読してきたからに他ならない。彼女の作品がなくして私のイタリアへの関心はなかったと断言できる
もちろん主要作品は全部読んでいるし、自慢じゃないが「ローマ人の物語(全15巻)」は、1巻からずっと発刊直後に購入し読み続けてきた。

今回のイタリア旅行は同行者がいたが、それも「ローマ人の物語」を初め塩野作品の読者であったからだ。
フォロ・ロマーノを歩きながらカエサルに思いをはせ、ポンペイを訪れて大プリニウスの悲劇を思うことができたのも、フィレンツェマキャベリの肖像に出会って喜べたのも、サン・マルコ広場ヴェネチア共和国の栄華を目の当たりにする思いができたのも、全部そのおかげである。
私たちのように塩野作品を通じてイタリアに関心を持った日本人は少なからずいるはずで、イタリア政府が勲章を授与したのも当然なことだろう。

そんなわけで、階級はひとつ下ながら塩野七生と同じ勲章を、それも彼女の住むローマで入手できたことをあとになって知った私だが、ささやかな因縁を感じて、ちょっとユカイな気持ちになった。