徽章はバッジにしてピン

世界の徽章文化を考察するブログ。というか、バッジが大好き。コレクションを紹介したり、バッジに関する情報を考察したり。実用性皆無、実生活への寄与度ゼロ保障のブログです。

中国 「王安廷小小展覧館」参観記! ~中国旅行編その5~

北京を離れ、私が次に向かったのは、中国四川省省都成都四川省を訪れたのはこれが始めてだ。
理由は簡単で、なんといっても、遠かったからだ。北京からだと、最も速い列車でも、なんと26時間もかかってしまう。西隣はもうチベット自治区だ。遠い遠い内陸の地である。

四川省は、古くは「巴蜀」とも呼ばれる地域だが、「巴」という漢字はヘビの象形、「蜀」の字にも虫が含まれていたりして、人外の地とはいわないまでも、なにか「辺境」というイメージが強い。ま、地産の豊かさから、「天府之国」という美称もあるにはあるのだが。

だが、実際訪れてみると、現代の成都市はとても大きな都会である。地図からも明らかなとおり、古くは円形の大きな城壁を持った都市で(今は城壁はまったく残っていない)、現在ではその中心部に四川科学技術館毛沢東像がそびえている。

毛沢東像は、当然ながら文革時代に作られたもので、高さ12.26m(毛沢東の誕生日、12月26日に因んでいることはいうまでもない)の巨像が、今も南側の天府広場を見下ろしている。
天府広場のほうは、紛れもなくミニ天安門広場であろう。が、今は噴水が市民の目を楽しませる憩いの場となっていて、かつての大量動員型政治イベントの舞台という雰囲気はみじんも感じられない。
あちこちで記念写真を撮る人々でごった返している(私もカメラのシャッターを頼まれた)。
中国にとっては、幸福な変化というべきだろう。
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毛沢東像と展覧館をバックに記念写真を撮る家族連れ)


さて、この成都には私がぜひ訪れてみたい場所があった。すでに紹介したこともあるが、中国で有名な毛沢東バッジコレクターがいるのである。彼がどういう人かは、ぜひこちらを参照していただきたい。
kjhst220さんの所でも紹介されているが、「毛沢東像章図譜」という毛沢東バッジ写真集が1993年に発行された。それがこの人のコレクションなのであった。

10年以上前に訪れたことのある友人に聞いて、だいたいの場所は知っていたのだが、市内骨董街にある文革グッズの店主に尋ねると、地図で詳しい場所を教えてもらった。やっぱり有名なんだなあ。

中心地にほど近いが、大通りから一本道を隔ていて、古い木造の家々が立ち並ぶ一画、五福街。
さてどこにあるのやら、分からなかったらその辺の人に聞いてやれ・・・と思いながら歩いていると、いきなり目の前にそれがあった。
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(「王安廷小小展覧館」入り口。外の壁にも毛沢東ポスターなどが飾ってある。元々は土間の納戸か何からしい)

おおっ、ついに来たのか!そう思いながら私は開けっ放しのドアをくぐった。
誰もいないのかな?と思うと、入り口のすぐそば、荷物に埋まるようにして椅子に腰掛けている老人がいた。人の気配に全然気がつかなかった私は、少々ビックリしながら、見学してよいかどうか尋ねた。この人が王安廷さんらしい
彼は声を上げて誰かを呼ぶと、奥さんとおぼしき女性がやってきた。どうも王さんは耳が遠いらしい。私が昔見た彼の写真でも、彼は補聴器らしきものをはめていたものだ。
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(王安廷氏とその奥さん。昔の写真と比べると、王氏はずいぶんやせてしまった。後ろの缶の中はバッジのようだ)

中は土間で、中は思ったよりも狭い。展示内容は、正直けっこう乱雑な感じ。訳の分からぬものが雑然と積み上げられてしまっていて、整理されていないので、展示が展示になっていない。ホコリも堆積し、ケースのガラスは割れ・・・コレクションの管理状況は、お世辞にもよいとは言えない。
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(展覧館内部の様子。奥から入り口側を見る)

奥さんの案内で展示品を見させてもらう。
王安廷氏は、毛沢東バッジコレクターとして有名だが、それだけではなく、毛沢東グッズや文革グッズも多数所持している。展示状況がよくないのでよく分からないが、貴重なものもあるのだろう。
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(展示品の様子。バッジ類他)

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(展示品の様子。毛沢東胸像やらポスターやら写真やら・・・)

奥さんの薦めで、見学者名簿に記帳してきたが、見ると外国人(欧米人)の来館者も多数いる。ううむ、何の資料を見てこんな所にくるのだこの人たちは・・・?

ところで、私が密かに企んでいたのは、著名コレクター・王さんのサインをもらってこよう!ということだった。ま、本でもよかったのだが重くてかさばるので、そのために成田空港で筆ペンと一筆箋を買ってきたのである。本当はこんなもっと簡素な一筆箋のが欲しかったのだが、さすが成田空港、上村松園シリーズしかなかった・・・(笑)

サインをいただきたいのですけど、と頼むと、奥さんが彼の耳元でその意を伝えてくれた。
さて、なんと書くのか・・・と見ていると、「祝您身体健康 王安廷 2007年12月29日」。
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(「健康をお祈りします」。王氏直筆サイン!)

「毛主席万歳」くらいのことを書いてもらいたかった気もするが、健康を祈られてしまった(笑)。
先生もどうぞお元気で、と見学の礼を言って別れた。

別れ際、奥さんから名刺をもらった(裏面は英語)。
なんだかすごい肩書きだ。列記してみると次のとおり。
東方紅紅色収蔵家研究家
・中華毛沢東像章収蔵研究会会長
四川省成都市五福街小小展覧館館長
・中国'文化革命博物館'第一創始人第一館長
・≪当代文物≫主編
(注:当代文物とは、彼の発行しているミニコミ誌。現在も続いているかどうかは不明)

王安廷氏は、もともとが貧しい労働者出身で、文革後人気がなくなり廃棄されるバッジを集め始めたという。共産中国を打ち立てた毛沢東に対する素朴な尊敬もあったようだ。
今回感じたのは、このコレクションが彼のアイデンティティであり、プライドになっているということだ。
世界中から外国人が訪れ、いろんな肩書きをもらい、彼にとってはこのコレクションこそが命、ということなのだろう。

私も見に行きたい!という人は、王さんがご健在のうちにどうぞ。
「王安廷小小展覧館」住所:中国四川省成都市五福街23号