徽章はバッジにしてピン

世界の徽章文化を考察するブログ。というか、バッジが大好き。コレクションを紹介したり、バッジに関する情報を考察したり。実用性皆無、実生活への寄与度ゼロ保障のブログです。

番外編 菊花紋章について

議員バッジを初めとして、日本のバッジを語る上で欠かせないのが、菊花紋である。
日本人は条件反射的にこの紋章には権威を感じる。このバッジを身につける者は自ずと権威者然とふるまい、彼のつけているバッジを見る者も、彼を権威者と感じてしまう。そういう習性をもっているのである。

「叙勲・受章 心からお祝い申し上げます」(平成12年秋 日本叙勲者顕彰協会)のネタが続いて恐縮だが、この豪華な記念品カタログに、「菊花ご紋章について」という解説ページがある。
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この協会の販売している叙勲記念品には、すべて菊花紋が付けられているのだが、それについての説明がある。
要するに、「十六葉八重表菊」は天皇家の紋章なので一般には用いることができないが、「十六葉一重菊」はパスポートや議員バッジにも用いられているので、こちらの方を使っている、ということらしい。
確かに、販売されている記念品を見てもその通りになっている。
もし萼のある十六葉菊花八重表菊の天皇家のご紋章を使用した場合には何らかの対処をせざるを得ないとの宮内庁のご意向も伺っておりますので、皆様方のご識見とご賢察により当協会使用の菊のご紋章についてご理解いただけるものと確信する次第であります。
なのだそうで、十六葉一重菊を使って商売しているからといって、別に不敬には当たらないよという主張である。でも、宮内庁による「何らかの対処」ってのが具体的にはなんなのか、ちょっと気になる。
ということはつまり、私が十六葉一重菊の紋を勝手に使ったところで、少なくとも公には文句は言われないらしい。

以前、中国の友人(マニア仲間)と北京で会食したとき、日本の紋章の話が出たので、天皇家の紋と我々が持っているパスポートのそれとは別物だと説明したら、なるほどそうだったかと感心されたことがある(この辺がさすがマニアだ)。とはいえ日本でも一般にはあまり区別されていないようだ。

ところで、この本の説明には、「十六葉一重菊はパスポートや議員バッジに使われている」とあるが、これは事実ではない
パスポートはともかく、現在の国会議員バッジに使われている菊花は十一葉。歴代の衆参議員バッジの花弁数を数えてみても、時代によって11~14枚と微妙な幅があるものの、花弁数が16枚のものはひとつとして存在しないので念のため(そもそも昔は菊の花の形をしていない)。

少しでも議員バッジに関心がある人なら絶対に間違わない話だと思うのだが、こうも平然と書かれると、せっかくの菊花紋章の説明まで信憑性を疑いたくもなる。