徽章はバッジにしてピン

世界の徽章文化を考察するブログ。というか、バッジが大好き。コレクションを紹介したり、バッジに関する情報を考察したり。実用性皆無、実生活への寄与度ゼロ保障のブログです。

日本 大阪金属労働組合徽章

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8月30日の選挙に向かって、各党のアピール活動が盛んだ。次の選挙では躍進の可能性が大きいと伝えられる民主党の党首、鳩山由紀夫は「友愛社会を実現しよう」と訴えている。

友愛、ねえ?
まあ別に悪かあないけど・・・なぜこの単語を取り立てて使うんだか、私は何となく違和感を感じてしまう。政治用語としてはちょっとピンとこないというか。どういうイメージを聞き手に喚起させたいのだろう?

「友愛」といって連想されるのは、近代日本における初めての本格的労働者団体、「友愛会」である。大正元年8月、15人の有志が集まって労働者の親睦や能力、地位の向上を目指して結成された。現在の労働組合のハシリではあるが、共済や相互扶助の性格が強かった。会の名称からして、労使対決に勝利するためのモノではなさそうな気がする。
会長は鈴木文治。会は急速に発展し、会のシンボルを決めることになった。鈴木会長は悩んだらしい。
大河内一男著「暗い谷間の労働運動 大正・昭和(戦前)」(岩波新書)に、シンボルがいかに決められたか、その経緯が鈴木文治の著作から引用されている。

「その時、ふと目についたのは、統一協会(注:ユニテリアンのこと。鈴木文治はクリスチャンであった)の来客用の椅子に敷いてあった布団の模様である。その図柄は西洋風の炬火を月桂樹の葉で囲ったものである。私はこの図案から思いついて、一つの図案を完成した。月桂樹の葉は、これをリボンで二か所くくりつけ、西洋風の炬火は日本式の篝火に代えた。月桂樹はありふれた意匠であるが、これで勝利、凱旋(即ち労働の勝利)という意味を現し、リボンをくくりつけて、団結、一致、協力を表象し、火炎を以て正義、純血、熱情、愛、光明を表徴したつもりである。」

これを読んだとき、どんなデザインなんだろう、と思っていたのだが、手元にそのデザインのバッジがあった。気がついたときはちょっと驚いた。
今日の一枚は、大阪金属労働組合のバッジだが、描かれているのはまさに、篝火と月桂樹(2か所を縛ってある)である。上の「M」は金属METALからとったものだろう。

実はこのバッジは友愛会ではなく、その後頻発する労働争議の影響を受け、労働組合として改変された日本労働総同盟(総同盟)のバッジであるらしい。名称や活動内容が変化しても、総同盟は友愛会のシンボルが引き継いだようだ。ただし、会旗の色は、黄色地から赤地へと変えられた。

現在の民主党は、各労働組合の支持をとりまとめているが、「友愛」スローガンには、その辺の連想もあったのかなーとひそかに疑ったものだ。
でもたぶん違うだろうな