徽章はバッジにしてピン

世界の徽章文化を考察するブログ。というか、バッジが大好き。コレクションを紹介したり、バッジに関する情報を考察したり。実用性皆無、実生活への寄与度ゼロ保障のブログです。

アメリカ ギリシャ文字クラブバッジ「ΦΚΣ」

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アメリカ映画や小説にたまに出てくるのだが、アメリカには学生の社交クラブがある。通常、ギリシャ文字の名前がつけられているこれらのクラブは、フラタニティ(fraternity)、あるいはソロリティ(sorority)と呼ばれている。
ここでは、合わせてギリシャ文字クラブと呼ぶことにする。

えー、そもそも何でギリシャ文字なのかはよく知らないのだが、日本にはないアメリカ独特の文化のようだ。中でも最も有名なのが、ブッシュ大統領も在学中にメンバーであったというイェール大学のスカルアンドボーンズ(S&B)だろう(たぶん)。
クラブでは、それぞれ独自の儀式を経て、メンバーとなった学生たちは一種の同志となり、緊密な連帯感で結ばれる。社会に出てからも元メンバー間の絆は切れることなく続き、いろんな影響力を発揮していくらしい。特に有力大学の場合、社会のエリートとなっていく学生たちにとって、少なからぬメリットがあるのだろう。

さて、これらクラブにはちょっと秘密結社的性格もあって、まあその辺が独特だと思うのだが、神秘主義的な儀式やシンボルなどがある。・・・というあたりまでは漠然と知っていたのだが、実はこれらギリシャ文字クラブには、それぞれのシンボルを模したメンバーバッジも存在する。
基本的に金持ち・名門家庭の学生中心のクラブだからかどうかは知らないが、たかがバッジとは言え、豪華なものが多い(チープなモノもあるけど)。
今日はひとつ紹介してみよう。

ΦΚΣ(ファイカッパシグマ)、またはΦΣΚ(ファイシグマカッパ)というクラブのバッジだ。縦横13mmと小さいが、大体この種のバッジはみなこの程度の大きさである。
デザインは、鉄十字型にドクロと骨
よく見ると、十字の地には細かい唐草状の模様が彫り込まれている。素材は金色の金属だが、小さいながら手に持つとズッシリと重く、刻印はないが10金くらいはありそうな感じ。
金地に七宝の黒がよく映え、華やかさを抑えた高級感がにじみ出る。特にドクロと骨の造形が素晴らしく、この部分は別パーツで組み込まれているのだが、丸く立体的に盛り上がっており、ドクロは側面から見てもしっかりと作られているのだ。
裏面には所有者らしい名前(Edwin J.)と、「'25」の手書き文字がある。1925年製だろうか。
そして、中央に「MDCCCL」の刻印。これはローマ数字で「1850」を表す。こちらは、おそらくクラブの創設年を示しているのではないかと思われる。どこの大学か分からないが、歴史ある大学のモノではあるらしい。

・・・という具合で、これはほんの一例に過ぎないのだが、通常のバッジメーカーの作品というより、ほとんど宝飾メーカーのモノといってもいいくらいの出来である。事実、ギリシャ文字クラブのメンバーバッジには、真珠や宝石が用いられているものも非常に多い。中には、驚くような逸品も存在する(当然高い)。

こういう世界なもんで、コレクターがついうかうかと足を踏み入れてしまうと大変なことになる。しかし、完全に無視するにはあまりにも魅力的な世界でもあり、自分の財布の中身と、対象物をよく比較検討していく冷静さが不可欠である。
でもやっぱり、「これはスゴイ~!」とうなってしまう名品もあるんだよなあ・・・