徽章はバッジにしてピン

世界の徽章文化を考察するブログ。というか、バッジが大好き。コレクションを紹介したり、バッジに関する情報を考察したり。実用性皆無、実生活への寄与度ゼロ保障のブログです。

日本 第20回全国大学高専学生弁論大会記念メダル(1934年)

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私の好きなバッジジャンルに、戦前労働運動関係バッジがある。意外に思う人もいるかもしれないが、特に1930年代に豊富だ。プロレタリア風ムードに満ち、それはもうレトロを通り越してSF的ですらある。それほど独特な作品が多い。

このメダルを見た瞬間、おおっこれもか、と思ったものだ。
筋肉隆々の労働者風男性が斧を片手に、右手を高々と上げ、上には労働者のシンボルたる五角星が光芒を放つ。「 革新!!」という角張ったレタリングもプロレタリア風。この男は、自分を取り囲む鉄鎖を斧で断ち切ろうとしているのかもしれない。
これだけシンボルがそろうと、私が30年代の労働運動モノかと確信したのも当然だろう。だが、裏面には意外な文字が。
学園ノ自治!研究ノ自由! 学生弁論ノ社会的役割ヲ果セ! 第二十回全国大学高専学生弁論大会 皇紀二千五百九十四 主催 関西大学弁論部

なんと学生弁論大会記念品であった。昔は弁論部というのがどこの大学でも活発に活動していて、その証拠に昔の弁論部バッジというのは大変多く見かける。今はほとんどみかけないけど。
果たしてこの全国大会でどんな討論が交わされていたのか、私には知る由もないが、「学園ノ自治!研究ノ自由!」というあたりは、後の学生運動を彷彿とさせる。当時は、学生弁論会にはリベラルな雰囲気が満ちていたことを思わせる。
まあ、このようなデザインは、当時の流行として製造委託先のメーカーが採用しただけという可能性もあるにはあるのだけど・・・。
まあ真相は不明ながら、少なくともこのようなデザインと学生弁論会の性格がまったく反していたとは考えにくいのである。

しかし、このような学生弁論部の自由な雰囲気は、長く続かったであろう。1940年代にはいると大政翼賛会が社会を覆い、国民精神総動員運動があらゆる方向へ展開されていく。労働運動も、学生の自治も、完全にこの体制に巻き込まれていくのである。