徽章はバッジにしてピン

世界の徽章文化を考察するブログ。というか、バッジが大好き。コレクションを紹介したり、バッジに関する情報を考察したり。実用性皆無、実生活への寄与度ゼロ保障のブログです。

南アフリカ トランスヴァール・オレンジ自由州(併合記念?)バッジ

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サッカーワールドカップ南アフリカ大会が開幕して1週間。予選リーグで日本代表チームは初戦のカメルーン戦に勝利し、どうせ3連敗して終わりだろ・・・という諦めムードを吹き飛ばした。
サッカーにはほとんど思い入れのない私だが、どうせやるならやはり勝ってほしいのはいうまでもなく、できれば決勝リーグには残ってくれるといいのになあというくらいには期待している。

が、今日の試合。次の相手は世界ランキング4位のオランダ。優勝候補にも名が上がるこのチームに勝利するのはさすがにムリそうな気もするが、今日の試合はそんなに遅い時間じゃないのでテレビ観戦でもしようと思っている。

ついでに南アフリカに関連するバッジでも紹介しようと思っていたのだが、うーん、ネルソン・マンデラのバッジくらい持っていたような気もするが、なんかないかなあと思っていたところ、テレビで聞こえてきたのが今日の日本-オランダ戦の行われる街、「ダーバン」。
そこで思い出したのが今日の一枚だ。

ところで、このブログを見たことのある人ならご理解いただけると思うが、バッジの中には、これはスゴイ!と思わせる逸品がある。
このバッジもそのひとつで、造形といい七宝仕上げといい、見事というほかない。上部のライオンの造形、旗や紋章の七宝仕上げ(左右の紋章は七宝で描かれている)の美しさ、おもしろさは、滅多に見ることができないほど素晴らしい。オレンジ自由州の紋章の中央に描かれているのは、どうやらオレンジの木であるらしい。トランスヴァールのほうにはライオンが見えるが、なんだかユーモラスな顔をしている。

私はバッジの製造技術においてイギリスは全ヨーロッパでも傑出していると日頃から評価している。このバッジを見たときも、おおさすがイギリス製・・・と感心していたのだが、裏面を見ると、メーカー名と「DURBAN」という地名の刻印がある。
ん?するとこれ、 イギリス製じゃなく、南アフリカだったのか!そのことに気づいて驚いたのは、バッジを手に入れてからしばらく後のことだった。
そして、今日の日本-オランダ戦が行われる街が、まさにそのダーバンなのだ。

このバッジ、そもそもどういうバッジなのだろう。
左右両側に「TRANSVAAL」、「ORENGE FREE STATE」という文字と州章が描かれており、これがヒントとなってくれる。
ここで、南アフリカという国の歴史を読み直してみよう。

大航海時代、オランダ人が航海上重要な拠点であるアフリカ大陸南端の喜望峰に中継地を築き、これが発展してケープ植民地が誕生する。オランダ人植民者(ボーア人)は増え、原住民との抗争や混血化を経て、この地に定着していった。
ところで、アフリカ最南端部に当たるこの地は、航海上の要所であるだけでなく、地球上で極めて産出量が少ない貴重な鉱物、金やダイヤモンドが豊富であった(いつも思うが、こういうのが住民にとって幸福につながるかどうか、微妙なところだね)。
で、やってきたのがイギリス人。ケープ植民地がイギリスに譲渡されイギリス系移民が増えると、ボーア人たちはさらに内陸に移り、オレンジ自由州やトランスヴァールを建国する。が、イギリスは南アフリカ全土の征服をめざし、ボーア人との2度にわたる戦争が勃発する(ボーア戦争、1880-1881年、1899-1902年)。
この戦争で最終的にボーア人はイギリスに敗れ、1902年、トランスヴァールやオレンジ自由州も大英帝国支配下に入った。

・・・というわけでこのバッジは、確証はないものの、デザインからしボーア戦争に勝利したイギリスが、その記念として作ったバッジと思われる。
ということは20世紀初頭に作られたモノなのだろう。それからもう100年以上が経過するわけだが、21世紀現在、これだけ質の高いバッジはもはや作られていないといっていい(絶対存在しないとはいわないが)。

サッカーの話に戻るが、南アフリカにはそんなわけで今もオランダ系移民の子孫が多く暮らしている。日本代表チームはそういう環境の中でオランダ代表チームと戦うわけで、ほとんど敵地での戦いとなるわけだが、がんばってほしいものだ。
思えば、イングランドとオランダの試合というのも、決勝リーグで実現すればおもしろいかも。両方とも優勝候補チームである。
第3次ボーア戦争勃発!」などとスポーツ紙なら見出しをつけたりしてね。