徽章はバッジにしてピン

世界の徽章文化を考察するブログ。というか、バッジが大好き。コレクションを紹介したり、バッジに関する情報を考察したり。実用性皆無、実生活への寄与度ゼロ保障のブログです。

日本 大日本帝国水難救済会有功章

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今月16日午前、韓国珍島沖で発生した旅客船の沈没事故には、本当に驚いた。初めのニュースでは、大規模な海難事故が起こったなあくらいにしか思っていなかったのが、大惨事ではないか。

470人あまりの乗客乗員のうち、当初290人以上が行方不明とされた。ところが大規模な救出作戦も難航を極め、死者数は少しずつ増え始めたが、生存者はいまだ確認ゼロ。沈没船の中から発信されたというメールもどうやらニセだったらしく、そもそも生存者の存在を示す痕跡すら今のところ確認できていないようだ。
乗客の多くは修学旅行に向かう高校生だったといい、事故の規模もさることながら、言葉を失うほどの悲劇である。もはや最後の奇跡にすがるしかないのか。なんとか1人でも多く助かって欲しい。
しかし、事故の発生経過などを見ていると、二重三重に人為的ミスが積み重なって起きた惨事のようだ。これから事故原因など詳細な調査は行われるだろうが、結果の重大さを思うと、遺族はどれほどの悲憤の念に堪えねばならないのか。

さて、海に囲まれた島国の日本では、悲惨な海難事故を防止するために、明治22年大日本帝国水難救済会が設立された。おもしろいことに、創設者が「讃岐の金比羅さま」、琴平神社宮司である。
全国各地に支部を持ち、公官庁の指導を受けながら海難救助の活動を展開する民間ボランティア団体である。イメージとしては、地域の消防団みたいなものだろうか。

現在でも公益社団法人として存続していて、歴代の名誉総裁は皇族が務めている。現名誉総裁は、昨年のオリンピック招致の最終プレゼンテーションにも登場した憲仁親王妃久子殿下である。

今回の一品は、その有功章である。
1人の男が、折れた船のマストにつかまり、今にも波に呑まれそうな様子が描かれている。左手に布のようなものを持っているが、救助を求めるために合図を送っているものか。男の必死な表情が印象的だ。
メダルの全体の形状は救難浮輪の形をしていて、これは会のシンボルでもある。

メダルの裏面には、篆書体で「有功章 大日本帝国水難救済会」と文字がある。

大日本帝国水難救済会明治22年~37年、その後帝国水難救済会と名称を変え、戦後、日本水難救済会と改称し、現在は公益社団法人として活動している。

というわけで、この会の名称から、今から125~110年ほど前のものであることがわかる。