全体の印象として、重厚でごついバッジである。舵輪と錨、波のデザインもお約束という感じの船員勤労章。あまり詳しく調べていないので、はっきりしたことは知らないが、戦時中、軍人以外にも産業など各種分野で活躍した人を顕彰する制度ができた。有名なのが昭和17年制定の勤労顕功章・勤労章であるが、この船員勤労章もその類のものと思われる。
なにしろ太平洋戦争の勝敗は、日本が海外で獲得した資源をいかに運び、軍需物資を賄うかにかかっていた。まあ後から考えてみれば、最初からかなり際どい綱渡りの作戦であった。当然のごとく結局は破綻し、日本は物資不足にあえぎ、敗戦を迎えることとなった。
そんなわけで、はるばると海外から物資の運搬を余儀なくされる日本では、戦争末期には軍民問わず船舶の損耗率は極めて高く、船員の死亡率は異常とも言えるほど高かった。
そんな危険に報いるためか、このような顕彰制度ができたのであろう。授与対象や授与数など知りたいところだが、今のところ資料が見あたらず、残念ながら不明である。