徽章はバッジにしてピン

世界の徽章文化を考察するブログ。というか、バッジが大好き。コレクションを紹介したり、バッジに関する情報を考察したり。実用性皆無、実生活への寄与度ゼロ保障のブログです。

日本 吉井町功労章 ~旭日勲章モドキ~

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パクリだ著作権違反だと世間を騒がせている東京オリンピックのエンブレム問題。パクリ疑惑を否定するデザイナーが別の件では盗作を認めたり、デザイン選考委員が問題収拾を図るべく原案を公開するも、そもそものデザイナーの設計思想の説明との矛盾が生じたり、もうなにがなにやら。

個人的には、佐野エンブレムは初め見た時は、うーんこれかあ、と思っただけで、いいじゃんこれ!とも思わなかったものの、ムキになってバッシングするほどひどいとも感じていない。少なくとも後になって公開された原案よりはよくなっている気がする(というより、これで採用されたの?と思った)。
著作権違反で訴えられているようだが、まあ似てると言えば似てる。でもデザインの世界なんてあんなもんじゃないの?よく知らないけど。

さて、バッジの世界にもこの種のことはしばしばあって、特段目くじらを立てていたらとてもやっていけないんじゃないか。

その実例を示す。
画像は、群馬県吉井町功労章。参考に、ホンモノの勲五等旭日章も載せておく。
見た瞬間、さすがの私もオイオイ!と思った。
中央部が緑色になっているが、おもいっきり旭日章のまんまである。鈕の部分は異なっていて、桐章から赤い逆三角形になっていて、ひらがなの「よ」をデザイン化した吉井町の町章が入れられている。赤と白の綬は、旭日章と全く同じ。留め具は安全ピン方式になっている。

手にしてよくよく見てみれば、とにかく全体にツクリの甘さが目立つ。中央の緑パーツに微妙なズレがあったり、本体と鈕のつなぎ目が雑だったり、全体にシャープな感じがないことなど、ホンモノに比べると出来栄えには格段の差があると言わざるを得ない。

旭日章の赤を緑に変えた意図はなんだったのか知る由もないが、これはいったいなんなのか。正直、形が似ているだけあって違和感しか覚えないし、組み合わせた町章の「よ」の字がただマヌケに見えてしまい、全体的なデキの安っぽさもあって、旭日章に似せて作ったことが裏目にしか出ていない。どうにも悲しい功労章である。

いつも疑問に思うのだが、日本の自治体が作る「準勲章」ともいうべき功労章や名誉章のデザインというのはどういうふうに決まるのであろう?デザイナーに設計依頼し関係部署での検討を経て、議会で承認を受け、条例化してからしかるべきメーカーへ製作依頼するのだろうか。それともデザイン込みでいきなりメーカーに依頼し、事後的に議会承認にかけたり、あるいは議会手続きをせず内部要領的な運用をするのだろうか。

こういう露骨な「勲章モドキ」を見ていると、デザインのことなどあんまり深く考えてないとしか思えないのである。
役所としては、あんまり斬新なデザインを採用して「それっぽく見えない」というのを懸念して、「まあ勲章っぽく作っておけば間違いないよね」という意識しかないんじゃないか。で、「とりあえず勲章っぽい感じで作ってください」と役所から頼まれたメーカーが、それじゃあそれっぽい感じで作ってみるかと、その結果こういう「緑の旭日章」みたいなものが完成してしまうのではないかと想像している。

ちなみに吉井町高崎市へ合併され、すでにない。

なお、当ブログでは、これ以外にもすでに「勲章モドキ」をいくつか紹介してきたので、関心のあるムキはそちらもあわせてご覧いただきたい。
ただ、実際には、自治体の功労章以外の民間のメダルやバッジにも、こうした「モドキ例」はたくさんあるので念のため(数としてはその方が断然多いだろう)。また、自治体の功労章等にも、勲章に見劣りしない傑作はたくさんあるので、その点は弁護しておきたい。変なモノを優先的に紹介してしまうのが私の習性なんで・・・。

ともかく、こうして見ていると、著作権云々などと言うことを持ち出してもしょうがないんじゃないかという気にもなろうというものだ。

まあ、佐野エンブレム問題はまだもめるかもしれない。いわくつきの五輪エンブレムバッジが世に出るのもまだ時間がかかるだろうか。早く出回るようになって欲しい。
こういう騒動を経てこそ、後になってバッジは印象深いアイテムになるのである。その騒動があったればこそ、価値があるのだ。
佐野エンブレム撤回反対。この騒動を受けて、俄然、エンブレムバッジを集めたくなった私である。