徽章はバッジにしてピン

世界の徽章文化を考察するブログ。というか、バッジが大好き。コレクションを紹介したり、バッジに関する情報を考察したり。実用性皆無、実生活への寄与度ゼロ保障のブログです。

日本 露領水産組合 一級功労章

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露領水産組合といってすんなり理解できる人がどれほどいるか知らないが、もちろん私はこりゃなんだと首をひねったクチである。

先月の「日英同盟メダル」の記事で日露戦争について少し触れた。
ポーツマス条約(日露講和条約明治38年・1905年)の11条には次のような条文がある。
「露西亞國ハ日本海、「オコーツク」海及「ベーリング」海ニ瀕スル露西亞國領地ノ沿岸ニ於ケル漁業権ヲ日本國臣民ニ許與セムカ爲日本國ト協定ヲナスヘキコトヲ約ス」

これを受けて、日露両国は明治40年「日露漁業協定」を締結。こうして水産資源豊富なロシア沿岸における漁業を行う権利を、日本人が法的に初めて得たのだ。ロシア沿海州の漁区の漁業権が競売に付され、日本漁業者も入札により漁業権を得ることとなった。

同年、大日本水産会内に沿海州漁業倶楽部が発足、これが翌41年には露領沿海州水産組合となり、さらに明治42年露領水産組合が成立するに至る。
もっとも、政治的にもセンシティブな地域ではある。法的な措置が取られたとはいえ、漁をめぐって日露両国の衝突やいざこざはたびたび起こることとなる。

さて、画像のバッジは、露領水産組合の一級功労章である(功労章裏面に、その文字がある)。
一級、と断るからには他にも等級があるのかというと、一級とは色違いで大きさもより小さい5級有功章の存在を確認している(デザイン自体は全く同じ)。

もとからリボンなし、バッジだけの有功章である。
デザインだが、まず中央に大きく描かれた、マス(サケ?)らしき魚が水面に身を躍らせる様子が印象的だ。周囲には白地に赤く旭日模様が描かれ、発展する北方漁業と国威発揚を象徴しているのであろうか。
魚の上部には、篆書体で「」の文字がある。
一見して明るいトーンの七宝の色彩と、跳ね上がる魚の様子もどこかユーモラスで(別にそれを狙ったわけでもなかろうが)、楽天的な楽しさを感じさせる。

この功労章、オリジナルの黒漆の箱付きである。上蓋の裏には、「J.ANDO TOKYO NAGOYA JAPAN」の金押文字がある。私もよく見慣れた文字。安藤七宝店製だ。
まあ昔は北は北海道から南は九州まで、近畿地方を除けば、徽章メーカーといえばほぼ東京製のシェアが圧倒的だ。

この功労章の製作期や受章対象者が不明なのが惜しいが、かつて髭面もいかめしいお歴々の胸にこういう楽しいバッジが光っていたのかと想像すると、愉快だ。