徽章はバッジにしてピン

世界の徽章文化を考察するブログ。というか、バッジが大好き。コレクションを紹介したり、バッジに関する情報を考察したり。実用性皆無、実生活への寄与度ゼロ保障のブログです。

モンゴル 牧畜模範メダル

イメージ 1

最近はすっかり日本モノばっかりで、「世界の徽章文化が云々」などといっているこのブログのスタンスもどうなんだとも思うが、別に誰のために運用しているブログというわけでもなく、何がどう偏ろうと気兼ねはする必要はないかもしれない。というより誰も見てないので別にどうでも構わない、というほうが正確か。
それでもたまには海外のバッジを掌に眺めつつ、歴史に思いを馳せるのもやっぱり楽しいものだ。これぞバッジコレクションの醍醐味といえよう。

今日はモンゴルの古いメダルを紹介しよう。
ロシア革命による混乱を経て、モンゴルが社会主義国になったのが1924年。以後、ソ連の強力な影響下で社会主義国としての歩みを続けることになる。

このメダルは、意訳すれば「牧畜模範メダル」ということになるだろう。五穀ならぬ五畜が描かれていて、モンゴルらしさあふれるデザインだ。ラクダ、ウマ、ウシ、ヒツジ、ヤギであろうか。
このメダルはおそらく建国初期のものと思われるが時代は不詳である。もっとのちの時代にソ連製とされる同種のメダルも存在している。そちらのデザインはずっと洗練され、素材、製法ともに完成度が高い。
イメージ 2

(より後の時代の牧畜模範メダル)

が、冒頭のメダルは、改めて見れば見るほどプリミティブなツクリをしている。おおまかな形は裏面の形状からもプレス製とみられるが、家畜の顔や毛並みはタガネで彫られているらしい。

さらに七宝。
通常の七宝は、プレスした素材の凹部に七宝を盛り、焼き付ける。しかしここでは、下部の葉飾り模様の部分に見られるように、凸部にそのまま盛り付けている。おかげで他色との混ざりが当然のこととして発生してしまっている。製作者はそれを全く気にしていないのである。

七宝の色も赤というより茶色に近く、それに中国の古い七宝と同様、青、緑、黄色の透明七宝が使用され、どことなく九谷焼の色を思わせる。七宝は盛り付け焼き付けたままで、一切研磨されていないので、すごくモコモコとした印象を受ける。

また、画像は示していないが、裏面には二桁のシリアルナンバーがある。通常のシリアルナンバーは、直接素材に打刻するので数字は陰刻になる。しかしこのメダルは、どういうわけか数字が陽刻となって盛り上がっているのだ。よくよくみると、数字は別パーツで、それをロウ付けしたようなのだ。なんでこんなに手間のかかることをしたのかよくわからない。

いずれにせよこのツクリ、くソ連製ではあるまい。

しかし、頂点にははっきりと社会主義のシンボルたる五角星が誇らしげに描かれ、社会主義体制下の製品であることを思い出させてくれる。
牧畜の国モンゴルが社会主義をどう受容して来たか、それを考えさせる一品として、興味深い一枚だ。