徽章はバッジにしてピン

世界の徽章文化を考察するブログ。というか、バッジが大好き。コレクションを紹介したり、バッジに関する情報を考察したり。実用性皆無、実生活への寄与度ゼロ保障のブログです。

番外編 東京オリンピック・パラリンピックにおけるメダルケースとリボン、入札結果!

2020オリンピック東京大会。先月はチケットの抽選販売が行われ、私も実は応募したのだが、あれだけたくあん応募して当たったのはたった一つ!という結果に衝撃を受けた。
しかし周りに聞いてみたら軒並み「全滅」という人ばかりで、たったひとつでもあたった自分はラッキーだったの?と後で思うようになった。

まあ今後もいろいろあるだろうが、当たったの外れたのもお祭りのようなもので、いろいろと首を突っ込めば突っ込んだでいろいろな出来事があるものだ。なんといっても来年は世界最大のイベントがやってくるのだ、厄介事も増えようが、少し身近に感じてみたいという気持ちのほうが私は強い。

さて、前回は2020オリンピック東京大会の開会1年前を機に公開されたメダルを紹介した。
ところで、昨年10月に、私は「東京オリンピック・パラリンピックにおけるメダルケースとリボンの発注情報という記事を公開しており、それについて一応オチをつけておきたい。

東京オリンピック組織委員会がプロポーザル契約の発注情報が掲載されたのが、確か昨年の秋。11月上旬に決定されるとあったので、てっきり年内くらいには公表されるかと思い、時々サイトをチェックしていたのに、年が明け、春になっても一向に公表されなかった。

ははあ、そういうことか・・・と私は事情を察した。メダル本体の公開前には公表しないつもりなのだと。
まさにその通りで、先月メダルが公開直後、やっとリボンとケースの発注情報が掲載されていた。(https://tokyo2020.org/jp/organising-committee/procurement/tender/)

さて、ではどこがいくらで落としたのか、気になるところを見ていこう(そんなことにはほとんどの人が関心ないと思うので、今回のネタも多分おもしろくないと思います)。

まず「東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会の入賞メダルリボンの製造委託契約」に係るプロポーザル方式による入札結果について」。


最終審査日時:2018年11月7日

契約者:丸信テルタック株式会社

契約金額:14,177,896円(税込)

契約期間:契約確定日の翌日から2020年9月30日まで

備考:「東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会の入賞メダルリボンの製造委託事業者選定実施要領」に基づき、提出された提案について2018年11月7日に最終審査を行った。
その結果、丸信テルタック株式会社から提出された企画提案書が、総合的に他者よりも優位と認められたため。



採用されたリボンはこの通り。

イメージ 1

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選手の栄光を称えるリボンのデザインには、東京2020大会を象徴する藍と紅を使用し、日本らしい組市松紋を用いたデザインは祝祭感とともに多様性と調和を表現しています。
また、視覚に障がいのある方が、手で触れることで順位がわかるように、うら側にシリコンプリントで金メダルには1つ、銀メダルには2つ、銅メダルには3つの凸の加工を施しています。」(メダル紹介文より)

1964年のメダルに比べると、直線模様に複雑な色遣いを組み合わせ現代的な印象。アップで見ると微妙なグラデーションが施されていたり、製法的にもかなり複雑そうに見える。素材は何だろうなあ?仕様上耐久性等が求められるので、絹ではないと思うけど・・・。
また、パラリンピック大会でもないのに敢えて視覚障害者への配慮を見せるあたりも最近の作らしい(これは組織委員会が示した仕様である)。

丸信テルタック株式会社とはいかなる会社か。
さっそく公式サイトを見てみると、福井県福井市にある会社のようだ。「織ネーム(レピア・ニードル)プリントネーム(ダムプリント)の製造販売及び開発商品(偽造防止・消臭等)の製造販売」と紹介されている。なるほど、このようなリボンの製造についてはお手の物であろう。

組織委員会の示した上限単価は、3,500円×6,000枚×1.08=22,680,000円。
これに対し、落札額14,177,896円(税込)。税込単価は2,363円、上限額の約63%ということになる。

次はメダルのケース。
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日本人が古くから親しんできた藍色の木製メダルケース。国産のタモ材を使用し、日本の高度な木工技術と職人の手で、一つずつ丁寧に仕上げられています。一つ一つ異なる個性豊かな杢目は、藍色の奥に浮かび上がり、オリンピック・パラリンピックの多様性を象徴しています。円形のフタと本体が磁石によって、繋がった輪のよう開いてそのままメダルをディスプレイすることが可能です。」(メダル紹介文より)

「磁石によってディスプレイすることが可能」と工夫が凝らされているが、これも組織委員会の示した仕様で「・メダル本体を飾ることができる機能・仕組みを備えること。」に対応したものである。画像では見えないが、強力なネオジム磁石でも組み込まれているのだろう。

組織委員会のページを見たとき、一瞬、黒いカスタネットみたいだな・・・と思ったのだが、実際には深い藍色であった。東京オリンピックのロゴにも採用されている大会のシンボルカラーといっていい。

東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会の入賞メダルケースの製造委託契約」に係るプロポーザル方式による入札結果について」。


最終審査日時:2018年11月7日

契約者:株式会社山上木工/吉田真也(SHINYA YOSHIDA DESIGN)

契約金額:48,591,792円(税込)

契約期間:契約確定日の翌日から2020年9月30日まで

備考:「東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会の入賞メダルケースの製造委託事業者選定実施要領」に基づき、提出された提案について2018年11月7日に最終審査を行った。
その結果、株式会社山上木工/吉田真也から提出された企画提案書が、総合的に他者よりも優位と認められたため。


さて、ケース製造委託で事前に示された上限単価は、7,500円×6,000個×1.08=48,600,000円。
対して落札額は48,591,792円なので、ほとんど100%に近い(99.98%)。税込単価は8,099円。
契約者の名前が連名となっているが、製造者とデザイナーが組んで応募しているのだ。

さっそく検索してみると、株式会社山上木工は、北海道津別町にある主に木工家具を製造する会社らしい。今回のメダルケースは耐久性があり、木目がはっきりと美しいタモ材を採用している。国産材にこだわったためだろう。タモ材は北海道産が多いらしいので、そのあたりもプロボーザルのプレゼンテーションでは大いにアピールポイントになっていたかもしれない。いくら高級材でも、「ベトナム産の最高級黒檀を使用」などと言ったのでは、組織委員会の心証に有利に働くとは思えない。

藍色に染められて木の肌色は一切見えないものの、木目ははっきりと浮かび上がっており、これがタモの特徴なのであろう。

ともあれ。
丸信テルタック様、株式会社山上木工様、吉田真也様、おめでとうございます
御社ではオリンピックに絡んだ宣伝とみなされる行為なは禁止されておられることと存じます(実際に社の公式サイトには一切掲載されていない)。
それにしても、渾身のアイデアと技術を積み込んだ自らの製品であるにもかかわらず、自分からは公表できず、PRにも使えず、ただ組織委員会から淡々と(あまり目立たず)発表されるだけとは。
御社とは何の縁もゆかりもないこのブログにてささやかな敬意をこめつつ掲載させていただく次第です。

直接の取引額としてはさほど大きい額でもないように思うが、各社の歴史に名を刻むプロジェクトになったと思う。採用の一報があった時は、喜びの歓声がわいたんじゃないかと想像する。

組織委員会のページでは、リボン・ケースの製造委託発注に一体何社の応募があったか記載されていないので、との程度の競争率であったかは全く不明だ(情報開示請求まですればわかるかもしれないが)。

さて、このようにリボンやケースについては誰がいくらで何個製造するのかが明らかだが、一方肝心のメダル本体については情報がない
組織委員会造幣局へ発注されているが、競争入札の形式をとっていないので、過去実績等を踏まえて随意契約を直接行っていると思われる。
一体、今回の金メダルはひとついくらくらいで作っているのだろう?銀メダル、銅メダルは?また、競争入札を行わなかった理由は?
後で公表されるであろう組織委員会の報告書でも見ればわかるのだろうか。

リサイクル金属回収大運動までやって作ったメダル。果たしていくらになったのか、知りたい気がするね。(どうでもいい?)