ちょっと想像してみてほしい。そこは英語の代わりに、エスペラントが普及した世界だ。
海外に出かけて、当然日本語などは通じなくても、エスペラントを話す人々がそこここにいる。アジアだろうとヨーロッパだろうとアフリカだろうと、現地語が全く分からなくても、とりあえずエスペラントさえ話せれば、コミュニケーションが可能だ。
エスペランティストが目指した世界はそれだ。そして、誰がエスペラントを話せる人なのか、その目印となるのがエスペラントの象徴である、緑の星のバッジ。
誰でも容易に習得可能な分かりやすい、合理的な国際言語は、人工語しかないとザメンホフ博士は考えた。さらに、ここが重要な点だが、平等でなければ国際語の資格はないと考えた。だが、エスペラントの歩んだ道は、まさに苦難の連続。民族主義、ファシズム、全体主義が横行する20世紀にあって、エスペランティストはしばしば自らの理想に生命をかけなければならなかった。
緑星章を胸につけたザメンホフの肖像を紹介したい。この肖像では、星形のバッジと、リボンに下げたバッジ、2つつけているようだ。
人類は21世紀を迎えたが、ザメンホフの理想は残念ながら実現せずじまい。それでも、彼が残したものは、人類にとってかけがいのないものだったと思えてならない。儚くも美しい思いがこもる緑の星のバッジは、私のバッジコレクションの中でも大切な存在である。