徽章はバッジにしてピン

世界の徽章文化を考察するブログ。というか、バッジが大好き。コレクションを紹介したり、バッジに関する情報を考察したり。実用性皆無、実生活への寄与度ゼロ保障のブログです。

安倍元首相の「国葬」に見る勲章とバッジ

 

安倍元首相国葬の祭壇(2022.9.27、日本武道館

多くの議論を巻き起こした安倍晋三元首相の国葬が今日午後、行われた。必ずや将来にわたって議論の的になり続けるだろう。

多くの労力と予算をつぎ込んで実施された国葬で、一般の感覚からすれば間違いなく盛大にして壮麗な式典には違いないのだが、会場(日本武道館)のせいか、なぜかどこかその辺の体育館で行われているような、殺風景なガランとした雰囲気が気になった。

まず帰ってからテレビニュースで見ていて目立ったのが、祭壇に堂々と飾られている勲章の数々だった。ただ、過去のニュースを見ていると、1967年の吉田茂国葬にしても、1975年の佐藤栄作国民葬にしても、祭壇の飾りは日本国旗、その上にこれでもかと勲章をならべ、花飾りで周りを埋めるという基本レイアウトは、良くも悪くも完全に前例踏襲である。

祭壇上の勲章の数々

ところで、安倍元首相の国葬に並んだ勲章の正体は何だろう。ここはバッジ専門ブログなので、政治論争はいったんおいて、今日登場したこれらのアイテムについてこだわってみたい。
あんまり海外の勲章に詳しくないのだが、わかる範囲で見てみよう。あくまで、多分これじゃないか?、という推測なので名前が間違っていたらご容赦を・・・。

(勲章名は推測です)

祭壇には勲章を飾ったケースが3つあった。中央には日本の勲章が飾られている。中央ケース左側が日本の最高勲章たる大勲位菊花章頸飾とその右に大勲位菊花大綬章(さすがにこれだけは断定できます)。
あれっ、安倍さんって大勲位菊花章もらってたんだっけ?と思ったらこれは両方とも死後叙勲によるもの。7月8日死去後、政府は7月11日に授与することが決定されていたのだった。

即位の礼にも登場したので、こちらも参照いただきたい。

badge-culture.hatenablog.com

次に、向かって右側のケース。こちらは外国から授与されたものだ。

一番左のオレンジのリボンの勲章、これがなんなのかは残念ながら不明。

その右隣は、オランダのオラニエ=ナッサウ勲章(Order of Orange-Nassau)。リボン付きが正章で、その下が副章。

その右、青いネックリボンは、オーストラリアのコンパニオン勲章(Companion of the Order of Australia)と思われる。これも死後、オーストラリアから授与されたもの。
その右に2つある小さな勲章については、小さくて判別できず正体不明。

次に向かって左側のケース。

一番右の青いリボンの勲章は、これも不明。うーん、わからない。

その左隣、白とオレンジのリボンは、スペインのイサベル・ラ・カトリカ女王勲章(Order of Isabella the Catholic)。こちらも正章・副章。

その左、リボンなしの勲章は、おそらくアメリカのレジオン・オブ・メリット(Legion of Merit)と思われる。
そのとなり、一番左端のはやっぱり小さくて判別できず・・・。


どの勲章をどの順番で並べるか、勲章の等級や当日の参列者などにも配慮しながら決めるのだろうか。儀礼上、結構難しい判断であろう。

遺骨と並んだバッジケース

なお、祭壇の上部には遺骨を納めた骨箱の横にバッジが飾られていたのに目が留まった。バッジは6つ見える。北朝鮮拉致被害者救出のシンボルであるブルーリボンバッジらしきもの。エンジ色に見えるのは衆議院議員記章らしい。個人が常日頃身に着けていた、銃撃当日もつけていたものかもしれない。全部で6つあったのがそれぞれ何なのか、さすがに画像では判然としない。

(祭壇上のバッジケース拡大図)

祭壇正面にずらりと勲章を並べ、遺骨とバッジを並べるというレイアウトが興味深く思った。政治と徽章文化とのつながりの強さを感じたものだ。

余談ながら、私もつい最近親族の葬儀に行ってきたもので、いろいろ思うところがあった。

badge-culture.hatenablog.com

2011に死去した北朝鮮金正日の葬儀でも、棺の前にこれでもかと勲章を並べ立てていたのが思い出される。

しかし、北朝鮮の場合は、そこに展示されていた勲章はすべて自国のものだけだった。普通なら海外から授与されたものもこれ見よがしに誇示してもよさそうなものではないか。金正日は多くの外国勲章を持っていたはずなので、やろうと思えばできたのである。なぜかそうしなかった。かの国の奇妙さである。