徽章はバッジにしてピン

世界の徽章文化を考察するブログ。というか、バッジが大好き。コレクションを紹介したり、バッジに関する情報を考察したり。実用性皆無、実生活への寄与度ゼロ保障のブログです。

番外編・「バッジコレクター、中国を行く」(北京編・前)

あけましておめでとうございます。元旦の本日、北京と上海を回って帰国したところです。
私にとっては年中行事、ブツ(コレクション)の買い出しツアー、です。ツアーといったって、むろん単独行なんだけど。
それにしても、こんな厳寒期に行かねばならぬとは・・・自分で言うのも何だが、つくづく因果な。

中国のコレクション業界は、私が本格的にコレクションを始めてこの10年で、すっかり様変わりしてしまったと言ってよいでしょう。まずはこの辺の事情を少しまとめたいと思います。

以前から、中国でコレクターが多かったのは切手やコインなどで、もちろん今でも根強い人気があります。そして、それに加え、近年ではバッジ・メダル類も人気のコレクション対象となってしまった感があります。
もちろん、中国の経済発展に伴い、人々が余暇や趣味により金をかけるようになってきたというのが最大の理由でしょう。そして、投機的にそれらのコレクションアイテムに手を出す人もでてきた。なにせ、毎年10%近い経済成長率を続けている状況を考えてみれば、どれだけの勢いでその金の捌け口が広がっているか想像できるでしょうか。

バッジコレクションについていえば、発端は、文化大革命期に作られた毛沢東バッジのコレクションの流行だったと私は考えています。特に、1993年は毛沢東生誕100周年記念の年でしたが、この時期に毛沢東バッジのコレクションカタログの類が相次いで発刊。文化大革命期(1966~1976年を指す)に作られた毛沢東バッジの大流行というのは、今考えても恐ろしいほどの規模で、毛沢東をテーマとして、あらゆるアイディアを絞った多様なバッジが作られたのです。それが、郷愁も相まってコレクションの対象として注目されるようになるのは、むしろ当然のことでした。なにせ、今の経済成長を支えている世代は、文化大革命紅衛兵をやっていた世代になりつつあるのですから。
(もっとも、毛沢東バッジは文化大革命のイヤな記憶をよみがえらせるものでもあったため、70年代末期、改革開放経済が始まった頃には大量に溶解され、リサイクルされたものでしたが。)

・・・こうして毛沢東バッジがコレクション対象として注目を集める中、その他の中国のバッジ類も関心が向いていった、というのが私の見方です。

毛沢東バッジのカタログに加え、90年代に入って様々な徽章類、メダル類の本も出版されました。これらが徽章類コレクターの増加に大きな役割を果たしたことは疑いがありません。また、インターネットの普及に伴い、コレクターの集まるサイトも開設され、情報交換やアイテムの交換などが盛んに行われることとなります。

さらに興味深いのは、こんなささやかなコレクター業界の中国特有の国際政治環境が大きく影響していることです。
つまり、当の中国本土の中国人の動向だけでなく、台湾や香港のコレクター・業者がかなり参入してきていて、これが中国のコレクション業界に大きな影響を与えているようなのです。国民党=中華民国政府が台湾に脱出して半世紀。最近では台湾人の中国訪問も以前とは比較にならないほど自由化され、台湾企業もどんどん大陸に進出してきている現在。・・・しかし、当の台湾には、人民共和国成立以前の古いものが非常に少ない。中華民国なのに、中華民国の歴史を語るモノがとても乏しいのです。
以前、私は台湾にも買い出しに出かけたことがありますが、あまりに見るべきモノが少ないのに驚いたことがありました。価値のあるバッジなんてありゃしない。かろうじて関心を惹くモノがあっても、腹立たしいほど高価なのです。香港は、台湾よりはマシでしたが、それでも失望しました。
自らの現代史を語るモノが、台湾には非常に乏しいのです。台湾人がそれを求めるようになるのは当たり前のことで、イデオロギーの垣根が中台間の交流を妨げていたのが、取れてしまった。コレクターにとっても、これは大きな転機となったわけです。

そこに来て、大陸の中国人の間でもコレクション熱が高まってくるとなると、高騰は当然のこと。
まあ、もちろん私だって本場の中国人とコレクションを争えるとは思っているワケじゃないですが、情勢はますます厳しくなる一方なのは間違いありません。

しかも、アメリカなどからの圧力で、人民元の切り上げを迫られているというのも、危険な兆候です。長い目で見れば、それはやむを得ないことなのでしょう。
さらに、2008年は、いよいよ恐れていた北京五輪が開催の年となります。ホテル代を始め、諸物価はまちがいなく高騰するでしょう。
だからオレ、あれほど北京開催に反対していたのに・・・まったくもう!

そんなわけで、中国モノコレクターの私としては、まったく時間との戦いだなあと思うのです。
えーと、この話、長くなったので続きます。