ああ、茶がうまい・・・
先日行った北京で中国茶を色々買ってきたのです。実は中国行くたび、いつも買ってくるのは茶とバッジ。冬の夜、財宝(注:バッジのことだ)に囲まれながらそれをズルズルとすするこのひととき。今夜の一杯は菊花茶。安い茶ですが、氷砂糖をカップに少々落すと、このさわやかな香りと口当たり。もう中国茶のブログでも開設しようかと妄想を抱くほど、いいんです。
さあ、今年のブログは旅行日記からスタートしてしまったのですが、今日からはまた1枚ずつバッジと向き合っていきましょう。
今年は戌年(いぬどし)ということで、まずはこれ。
中国のノミの市などで、この「犬牌」というのをたまに見かけるのですが、昔は犬の登録制度があったようです。「牌」は、日本語では「札(ふだ)」くらいのニュアンス。「霊邱県公署」とは、まあ町役場くらいのものか。要するに地方のお役所です。
それだけならば別になんということもないので、特に面白いモノでもないのですが、北京のノミの市で見つけて、おやっと目が留まったのは、「成紀739年」の文字。
おお、「ジンギス・ハーン紀元(成吉思汗紀元、略して成紀)」だ!
満州国に続き、日本が内蒙古を中心に傀儡政権を作ったのは1936年。この年を「成紀731年」としました。逆算すると、ジンギス・ハーンがモンゴル帝国の大ハーンとなった年を紀元としているようです。
ほほー、そうだったのか。計算して、今知った。
成紀739年=昭和19年=1944年。
傀儡政権の作り方にはパターンがあって、日本が中国大陸でやったのが、満州族やモンゴル族の独立を助けるというやり方。で、中国とはいかに異なる歴史を持った土地であるかをアピールするため、満州では溥儀を皇帝に据えたり、モンゴルでは700年も昔の話のジンギス・ハーンを引き合いに出したりしたのでした。
言うまでもなく、日本の敗戦と同時に、蒙古連合政府の歴史は10年にも満たずに消滅しました。
ところで、ジンギス・ハーンといえば・・・
NHK大河ドラマで「義経」を昨年やっていたけど、義経といえば、大陸に渡ってジンギス・ハーンになった、という荒唐無稽な伝説があります。が、これは日本が傀儡政権を作り上げるにはピッタリの伝説で、いってみれば政治的に都合よく仕立てられたという背景があるのです。
それは別にしても、今の日本人にとっては他愛もない話でも、モンゴル人にとってはハッキリ言って不快なだけで、あんまり言わないほうがいいんじゃないかと思う。民族の英雄を、アレは日本のサムライなんだぜなどと言われて面白かろうワケがないからです。
余談ですが、私はこうして色々バッジを眺めるのに必要なので、自分で「紀元対照表」を作成しています。大清帝国の「光緒」、中華民国の「民国」、日本の「明治、大正、昭和」そして「皇紀(神武紀元)」、満州国の「大同、康徳」などなど、西暦に換算しなきゃならないためです。その他、イスラム紀元や孔子紀元、黄帝紀元なんてのまで出てくるんだから、表でもなきゃやってられないんです。
おかげで、「成紀」という文字に瞬時に反応できたってワケです。
反応したところで、ただの犬の首に下がってた札を拾ってきただけなんですけど・・・・