徽章はバッジにしてピン

世界の徽章文化を考察するブログ。というか、バッジが大好き。コレクションを紹介したり、バッジに関する情報を考察したり。実用性皆無、実生活への寄与度ゼロ保障のブログです。

中国 六等嘉禾勲章

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中国で勲章の制度が制定されたのは清朝末期、1882年のことだ。もちろん欧米の叙勲制度にならったもので、外交上の習慣として彼らと勲章交換を行う必要が生じたためである。そうして生まれたのが、5階級からなる「双龍宝星勲章」だ。

日本でも勲章が制定されたのは明治8年=1875年のこと。今もある「旭日勲章」の誕生である。
まあそんなわけで、日本でも中国でも勲章という文化は、中世から続けてきたヨーロッパから見ればずっと後発組である。

以来、日本は20世紀半ばにいたるまで政治体制は基本的に変わらなかったが、中国ではその後辛亥革命共産主義革命と大きく政治体制が変化した。そのため、叙勲制度も大きく変化した。

まず、清末の「双龍宝星勲章」だが、これはもうなんというか中国趣味バリバリの勲章で、欧米的なセンスはほとんどない独特の中華風勲章だ。一方、辛亥革命後、中華民国政府が作った勲章だが、西洋風なデザインと中華風デザインが混在して、「中洋折衷」の味わいがある。

昨日写真で紹介した「嘉禾勲章」は、中華民国初期の代表的な勲章で、外国人にも多量に授与されたのでアメリカやヨーロッパで市場に売りに出されていることも多いようだ。もちろん、日本人にも授与者は少なくない。

画像が六等の嘉禾勲章。中華民国の勲章は9階級が基本である。なぜか日本では8階級なのだが。
「嘉禾」の意味はというと、「美しくめでたい作物」くらいだろう。さらにいうと、単なる作物ではなく「イネ科の作物」である。稲穂(麦穂、コーリャンの穂など)の意匠は中国では非常に一般的だが、それを勲章の意匠として取り入れたところがユニークである。
英名は、「Order of the Golden Grain」。
「帝政」を廃した「共和国」の勲章として、実にふさわしいと思うのだが、どうだろうか。私、好きなんですよ、この勲章。

さて、詳しく画像を見てみよう。
ノゲ(=芒。イネ科の植物の果実の先端から生じる剛毛状突起のこと)の伸びた5本の穂は、大麦のようだ。緑の葉と金色の穂は、豊かさと大地の象徴か。
根元のリボン状のものと、周囲を囲む5色の点(赤黄青白黒)は、もちろん五色旗=中華民国旗のナショナルカラー。反時計回りにその配列が繰り返されている。
裏面はというと、赤地にデカデカと「嘉禾勲章」と篆書体で書かれている。どういうワケだか、中国の勲章は、勲章名を裏面に刻むことが多いが、世界的に見てこれは独特の習慣だと思う。
全体の形は8角形の星形で、洋風な感じも受けるが、中国の意匠があしらわれていて、中洋折衷のデザインとなっている。
本体とリボンを繋ぐ環は、瑞雲(吉兆として、めでたいときに生じる五色の雲)をかたどったものだろうか。

白を基調とした安定感のあるデザイン、中洋折衷のユニークさ。
うーん、なんとも好ましい勲章だ。