徽章はバッジにしてピン

世界の徽章文化を考察するブログ。というか、バッジが大好き。コレクションを紹介したり、バッジに関する情報を考察したり。実用性皆無、実生活への寄与度ゼロ保障のブログです。

日本 「栄典制度改革私案(=暴論)」

秋は叙勲のシーズン。政府は今日文化の日、受章者4028人(うち女性336人)が発表発表された。
しかし、どうも私にとっては未だに新しい叙勲制度がなかなかなじみにくい。

平成12年9月、政府は栄典制度のあり方に関する懇談会を発足させたのである。
その趣旨は次の通りだ。
「21世紀を迎えるに当たり、栄典制度を社会経済の変化に対応したものとすることが必要である。栄典制度の在り方の検討に当たっては、我が国の栄典制度が長い歴史と伝統を有するものであること、また、叙勲制度は他の栄典・表彰制度とも関連しており、更に国際的な役割をも有していること等の性格にかんがみ、広く国民各界各層の意見をよく聴取し、十分に議論を尽くしながら検討を進めていく必要がある。」

まあ、要するにこれまで栄典制度に関する様々な批判や問題点を解決し、国民に受け入れられやすい新しい制度にしましょうというわけである。ただ、同時に廃止などを含む全面的な改革じゃありませんよと釘を刺している。原則としては現状維持を基本にしつつ、必要な手直しはどうしましょうか、と読めるのである。

懇談会のメンバーは、座長を含め有識者10名で、事務局は内閣府賞勲局。
で、平成12年10月から1年間かけて8回の懇談会が開催され、栄典制度の改革の方向が打ち出された。その結果に基づき、平成14年8月に「栄典制度の改革について」が閣議決定された。

どう変わったかというと、具体的には、
瑞宝章旭日章の違いを明確にし、8階級制を6階級制に簡略化。
・性別差をなくすため例外を除き宝冠章は廃止。
・勲章の名称に、従来の勲○等といった数字をなくし、固有名化すること。
・公務員と民間との格差解消。また社会に貢献した人々を広く取り上げるよう努めること。
・・・そして、平成15年の叙勲からこの改革が実施された。

しかし申し訳ないが、この改革とやら、まったくワタシ的には評価できないんである。
今までの方が良かった、というのもちょっとためらうが、この改革で良くなったとは思えないのだ。

まず、「わかりやすく」「簡素に」「公平性を重視して」という思想が色濃く、それに対応した変化が目立つ割には、その反面「伝統を重視しよう」などと相反することを言ってみたりする。
一体どっちなんだよ、と。

ハッキリ言って改革とはとても呼べないシロモノ言うべきで、正直「姑息な手直し」という以上の印象を受けることはできない。以下、その理由。

評価できない点、その1。
わかりやすくするため、階級を8階級から6階級にしました、という点。現実には7等8等の存在が形骸化しつつあったためだろうが、8つを6つにしてもひとつも分かりやすくならないし、簡素化という名にも値しない。せめて3階級制にするというなら話は別だが、これって改革なんですかという疑問がわくばかりだ。

その2。
勲○等などと、等級を数字で表すのは、あたかも人間に階級をつけるようでおかしい、などという意見が出たりして、勲章の名称から数字を消した。が、現に等級による上下は厳然として残っているのだから、単に数字を消しただけに過ぎないのである。もし等級がダメだというなら、すべての勲章を単一階級にすればすべきである。
あたかも差別語を廃せば差別自体がなくなるかのようなこの発想。なんとかならぬものかなあ。しかも内容としては、差はなくなってすらいないのだ。

その3
また、男女差をなくそうと、宝冠章を原則なくしたが、あくまでも原則、というところがまた引っかかる。なぜ完全廃止にしないのか。意味不明な変更だ。

その4
官民格差解消の具体的な手段がまったく示されていない。広く社会に貢献した人を表彰しましょうと言っている割には、目立つのは軍・警官の重視の方向だったりする。また、改革すれば公平性は確保できるものだという思いこみ自体が、まさに虚妄である。どんな改革をしたとしても公平性についての批判は絶対になくならない。
その程度の批判に耐えられないようなら、栄典制度など維持する必要などなく、なくせばいい。それが一番公平なのだから。

その5
結局、全体として、改革しようという目的はわからないでもないが、その結果出された方向というのがこれか?と思うとちょっとガッカリだ。回答が、まったく課題に対応していないんじゃないかと思うのだ。

こうなったらオレが・・とヤケクソになって私が考えたのが、以下の栄典制度改革私案(=暴論)。
・最も重要なコンセプトは、「栄典制度の魅力向上」。そして極力複雑怪奇で入り乱れてわかりにくい序列と内容にすること。
最低でも数回は説明を受けないとまったく理解できないほどに複雑な内容にしたい。わかりやすい制度が望ましいなんて、妄想もいいところである。ケータイの料金体系と勘違いでもしているのか。
複雑なほど、わかりにくいほど向上するもの、それは神秘性である。あえてそれを目指したい!

そしてその手段として、
・勲章の種類を一気に増やす。せめて倍くらいにはしたい。そして斬新でカッコイイ勲章を打ち出す。今の安っぽいオミヤゲみたいな勲章に魅力などない。伝統がないとアリガタミがないという意見もあるだろうが、デザインを工夫すればクリアできる問題だ。そもそも日本の勲章の「伝統」など、ヨーロッパに比べれば無視できるほど浅い。
経費がかかるというなら発行数を減らせばいい。受章者に実費を請求する手もある(外国ではそういう例も実際ある)。
旭日だの瑞宝だのに本当に魅力があるのか、その他の章じゃ本当にダメなのか敢えて疑問を呈することは必要だ。
・階級制の明確化と階級の増加。階級を8階級制から16階級くらいに増やし、それぞれの階級が一目瞭然なものとする。さらに種類を増すことで複雑さが飛躍的に増す。神秘性とアリガタミが増すこと必至である。
そういやフリーメーソンなんて、33階位あるんじゃなかったっけ?そのくらいあってもいいかもな。
・公務員(軍警察関係を含む)と政治家を叙勲対象から除外し、叙勲対象は民間のみとする。対象から外れた公務・政治関係者は、必要に応じてそれぞれの組織内で栄典制度を独自に設ける。ただし、情報公開を徹底し、国民の目に直接さらされる形で。

実は、平成12年の改革当時、国民から広く意見を募集しようと賞勲局がパブリックコメント募集を行っていたが、私が気がついたときには募集はもう終わっていて、ああ残念。

なお、栄典制度の改革については、懇談会の議論の内容や各種資料などが公開されている。
http://www8.cao.go.jp/intro/kunsho/kondankai/index.html

所詮私には縁のない話だけど・・・