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フランス 芸術文化勲章授与の詐欺事件 ~売勲詐欺~

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ネットのニュースサイトを見ていて、なんじゃこりゃ・・・と思ったのがこの記事。
西城秀樹に勲章詐欺 市村正親元マネ逮捕

「歌手の西城秀樹さん(58)が仏政府の芸術文化勲章を受章できると持ちかけ、斡旋(あっせん)料名目で個人事務所の男性マネジャー(53)から現金720万円を詐取したとして、警視庁捜査2課は28日、詐欺容疑で東京都港区六本木、無職、沖山美知子容疑者(60)を逮捕した。同課によると、容疑を否認している。
 沖山容疑者は市村正親さん(64)の元マネジャー。他にも男性芸能人らから数件の被害相談が寄せられているという。
 逮捕容疑は今年3~7月、男性に「西城さんが芸術文化勲章コマンドゥールを受章でき、副賞で3600万円の賞金が出る。受賞を決める人にお礼が必要だ」と嘘の話をし、現金計720万円をだまし取ったとしている。」(MSN産経ニュース

西城秀樹のマネージャーは、なぜこんなヨタ話を信じたのか。
だいたい、芸術文化勲章には賞金などない。それに、芸術文化勲章は3階級からなるが、最上級のコマンドゥールは初めていきなり受章することはできない。下位勲章を受章していることが要件であることなど、ちょっと調べれば簡単にわかるはずだ。
それに、被害者のマネージャーは、西城秀樹を励ましたかったという意味のこともいっているらしいが、結局ただのワイロではないか。どう考えていたのだろう。

意外にもこのフランス芸術文化勲章は日本の文化人にも受章者が多く、受章者一覧には、滝川クリステル松本零士大友克洋坂本龍一北野武などの名が見える。あ、池田大作もいた。サブカルチャー分野にまで広く受章者がいるあたり、フランスの日本文化への興味が感じられて興味深い。

というわけで、西城秀樹マネージャーにしてみれば、それなりにもしかしたらと思わせるリアリティがあったのかもしれない。
ただの受章では、720万円もの大金を出さなかったかもしれない。3600万円の賞金がもらえれば元を十分取り返せると思わせて、大金を出させたあたりは、詐欺としてはなかなか巧みと言えよう。勲章などと言うものは、世間の人には雲の上の話と感じるものだ。被害者は叙勲をちらつかされて、浮き足立ってしまったのか。
報道では、他にも芸能界では複数の被害者がいるようだ。犯人も犯人だが、被害者も被害者である。結局、金で賞金付きの勲章を買おうとしていたのだから。
あきれた話ではある。被害者にはあまり同情を感じない。悪いけど。

金を受け取るかわりに叙勲の便宜を図る、これが売勲である。
日本では、昭和3年に賞勲局総裁、天岡による売勲事件が起きた。昭和大礼の記念に、大規模な叙勲が行われたのである。天岡は賞勲局総裁という立場を利用して、某水産会社社長に叙勲話を持ちかけ大金をせしめた。社長は勲三等を要求して金を提供。実際には、叙勲は行われず、結果的には詐欺であったようだ。この事件は、勲章の権威に傷をつけたとして大きな社会的反響を呼んだ。
戦後にも昭和52年にも、通産省の役人が、業界の社長に叙勲の便を図り、金品を受け取っていたという事件が起きている。

しかし、日本の勲章には賞金がつかないためか、それとも制度の運用が厳密なためか、思うほど売勲事件というのは多くない。まあ水面下ではあるんじゃないかという疑念もなくはないが、別に証拠があるわけでもなく、事件になるものはほとんどない。実際少ないのだと思う。

そういうわけで、今回の西城秀樹マネージャーが被害にあった今回の売勲事件は、ちょっと珍しく感じた。実際にはコネも立場もない女性の犯行のようだが、外国の勲章ということで、警戒心が緩んだのだろうか。世の中には、天才的詐欺師がいるようなので、この犯人女性もその才に恵まれていたのだろうか。

画像が?b>フランス芸術文化勲章(L'Ordre des Arts et des Lettres)澄?br /> 中央が最上級のコマンドゥール、右が次位のオフィシエ、左が最下級がシュヴァリエコマンドゥールは首から提げ、オフィシエシュヴァリエは胸につけるタイプである。
中央には、LとAを組み合わせたようなデザインが見えるが、「Arts et des Lettres(文化と芸術)」の頭文字をとったものである。
1957年制定と新しい勲章だ。そのせいか、んー、正直、私の好みじゃないな・・・。

注:画像は参考画像です。私のコレクションではありませんので念のため。