徽章はバッジにしてピン

世界の徽章文化を考察するブログ。というか、バッジが大好き。コレクションを紹介したり、バッジに関する情報を考察したり。実用性皆無、実生活への寄与度ゼロ保障のブログです。

中国 中国人民志願軍 朝鮮戦争伝単バッジ

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朝鮮戦争というのは、すぐ隣の国で起こった大戦争にもかかわらず、敗戦直後の日本はそれどころじゃなかった。明日のメシの心配の方が先で、他人の戦争になどかまっていられる状態ではなかったというのが実情だろう。
この戦争によって朝鮮半島の分断は固定化され、冷戦はとっくに終わったのに未だ問題は解決されぬまま、将来への負の遺産は今もどんどん重くなりつつある。

さて、建国直後の中国にとっても深刻な戦争となった。米韓の防波堤たる北朝鮮を失うことを恐れた中国は、大軍を発して鴨緑江に迫る米韓国連軍を押し返した。あくまでも中国の正規軍ではなく、志願軍という体裁を取った(実態はむろん中国人民解放軍そのものである)。中国もアメリカと正面衝突する気まではなかったからである。

このバッジは、朝鮮戦争当時のものだが、非常におもしろいことに、対米軍用伝単用ハンカチに付いていたバッジである。
伝単といえば、通常は小さな紙片で、敵側の士気を低下させたり投降を呼びかけたりする戦場での宣伝に用いられるが、このバッジがついていたのは、木綿のハンカチで「MERRY CHIRISTMAS」。
1951年、中国人民志願軍が制作したものだ。クリスマスというくらいだから、やはり12月頃に作られたのだろう。
「あなたを愛する人の元に帰りなさい」「外国軍は朝鮮から手を引き、朝鮮を朝鮮人に返せ」「不正義の戦争をやめることは不名誉ではない」などと、数々のスローガンが書かれている。
それにしても、「メリークリスマス」というのは一種の揶揄だろうか。それともアメリカ軍兵士の里心を刺激するキーワードを採用したということだろうか。

このバッジは、「DEMAND PEACE STOP WAR」とスローガン入り。オリーブの葉をくわえた白い鳩は平和の象徴。裏面には「FROM C.P.V.」。Chinese People's Volunteer、つまり中国人民志願軍からの贈り物である。クリスマスプレゼントというつもりでもあったろうか。