徽章はバッジにしてピン

世界の徽章文化を考察するブログ。というか、バッジが大好き。コレクションを紹介したり、バッジに関する情報を考察したり。実用性皆無、実生活への寄与度ゼロ保障のブログです。

バチカン バチカンの空に翻る青天白日満地紅旗 ~イタリア旅行編その8~

「国土を持たない国家」とも言われる聖ヨハネ騎士団についても感じることだが、「国家」というのは、実はものすごく虚構の存在なのだなあと感じることがある。

ローマ滞在中、バチカン市国は何度も訪れたのだが、その思いを強くした。
一応、独立国ということになっているのだが、ローマの地下鉄を降りてサン・ピエトロ広場に向かう途中、いったいいつどこでバチカンに入ったのかまるで分からなかった
まあ、もちろんパスポートチェックが行われているとは思っていなかったが、ここまでイタリアと境界が不明瞭だとも思っていなかったのである。
もうすこし、なにかこう、バチカンに入りました!みたいな実感をもてるものだと漠然と思っていたのだが。

もっとも、イタリアからバチカンが独立した(といっていいのか)は、ムッソリーニ政権下の1929年のラテラノ条約による。今の形になってから、まだ80年あまりしかたっていないのだ。

しかし、ここで私はさらに「国家という虚構」を考えさせるものと出会った・・・(笑)
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カトリックの総本山たるサン・ピエトロ大聖堂の正面から伸びる大通り(コンチリアツィオーネ通り)で、中華民国の大使館があったのだ。
「台湾」でもなく、「チャイニーズ・タイペイ」でもない、中華民国の国旗、青天白日満地紅旗・・・辛亥革命の伝統を受け継ぐ栄えある旗が、バチカンの空にひるがえっているではないか。

おお、こんなところで。久しぶり。・・・
なんだか旧知の人を意外なところで見かけた気分になった私である。

そう、バチカン市国は今では珍しく中華民国と外交関係を持つ国である(当然中華人民共和国とは外交関係にない)。現在、全世界に24か国しかなく、しかもそのほとんどがアフリカや中南米、太平洋の島嶼国で、正直言って、われわれ日本人にとって馴染みも薄ければ、国際的影響力も弱い小国ばかりである。
試しに、これらの国の元首の名前を言ってみろと問われて、即答できる日本人はまずいないんじゃないか。

だが、その中に例外がある。規模はごく小さくとも、知名度、影響力抜群の国、そうバチカン市国バチカンの元首は法皇となるので、ベネディクト16世が現在の元首ということになる)。

なお、現在中華民国と外交関係のある国としては、ヨーロッパでは唯一だそうだ。
伝統的に反共の立場を取るバチカンとしては、まあ歴史的経緯もあるのだ。が、ベネディクト16世は中華人民共和国と対話の姿勢も見せており、まだ当分は安泰とは思うが、この旗が掲げられる場所がまた減ってしまう可能性もなくもない。

・・・・
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というわけで、強引にバッジの話に持って行ってしまうが、今日の一枚は、中華民国国旗バッジ(中国製)だ。
日中戦争時代のもので、裏面には不鮮明ながら、「抗戦建国五周年記念 全国慰労総会敬贈」の文字が読み取れる。
となると、1942年の作か。中国がこの戦いに勝利するまで、これからまだあと3年残る。
この手のものにしてはメッキも七宝の状態も完全で、非常にきれいな保存状態である。

私の思い入れもあるけど、なかなかカッコイイ旗だと思うけどな・・・