関東地方を北にくだって、真っ平らな関東平野もようやく終わりを告げるかのようにハッキリと山なみが近づいてくると、もうそこは北関東地方と呼ばれる地域だ。車窓から外を眺めれば、そこここに散在する桑畑を見ることができる。今も残る桑畑の姿が、かつての養蚕日本をわずかにしのばせる。
よく見ると、養蚕農家に特有の造りをした家々もわずかながら残っていたりもする。
よく見ると、養蚕農家に特有の造りをした家々もわずかながら残っていたりもする。
かつて、北関東は日本を代表する養蚕地であった。それが輸出産業を、日本の近代化を支えたのだ。今はほとんど伝統芸能化してしまったが・・・(といっては失礼か)。
そんなわけで、ノミの市などを訪れると、養蚕の技術普及と養蚕業の発展振興のために設立された大日本蚕糸会(明治25年任意法人として設立、昭和15年財団法人化)の会員章をたくさん見ることができて、その規模の大きさが忍ばれるのである。
虫の嫌いな人には嫌悪感があるかもしれないが、大日本蚕糸会のメダル(三等有功章)やバッジ(通常会員章)は繭や蛾、桑の葉をモチーフにしたデザインがとてもユニークで、私はわりと好きである。しかも、なぜだか必要以上に立派なツクリ!
今回紹介する第参種功績章も銀製で、神鏡型のなかに桑の葉と繭玉をデザインしたモノで、重厚感あふれるツクリ。これはまだおとなしい方で、二種、一種とランクが上がるにつれ、そこらの下位勲章よりもよほど立派なツクリとなるのである。まるで業界の力を誇示するかのように。