徽章はバッジにしてピン

世界の徽章文化を考察するブログ。というか、バッジが大好き。コレクションを紹介したり、バッジに関する情報を考察したり。実用性皆無、実生活への寄与度ゼロ保障のブログです。

日本 大日本農会緑白綬有功章

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栄典関係の話をもうひとつ。

この前、うちの冷蔵庫に入っている野菜を見たら、包装に「緑白綬有功賞受章!」とプリントされていた小松菜があった。要は生産者のPRなのだが、あんまり見かけないPRのような気がするなあ。

もっとも、「緑白綬有功章」と聞いても一般にはまずピンとこないわけで、どれだけのPR効果があるか多少疑問もなくもない。しかし、これはコレクターの私にはなじみのあるモノで、社団法人大日本農会が農家を表彰して贈るメダルである。
大日本農会は、明治14年に設立された全国的な農業団体で、皇族を総裁に、「農業の発展及び農村の振興を図ることを目的に」活動している。その活動の重要な地位を占めるのが、表彰事業である。
「農事改良の奨励または実行上功績顕著な者,農業上の有益な発見または研究を行い功績顕著な者」がその対象である。現在の総裁は桂宮宜仁親王だが、授与は総裁から行われることになっているようだ。

農業とはなんの関係もない者にとって、「ナントカ会のナントカ有功章」といわれたところでそのアリガタミは見当もつかないのだが、農業関係者にとって、大日本農会の有功章はなかなかありがたいモノらしい。ネットで検索しても、新聞報道や受章祝賀会がどうのこうのと、まるでちょっとした叙勲記念扱いである。
大日本農会はあくまでひとつの民間団体であって、それが独自に行っている表彰事業に過ぎないのだが、明治27年から続く表彰式という歴史、そして皇族総裁から授与されるという形式から、一種勲章に似た権威を維持している。
まあ受賞者にしてみれば、こういう章をもらっておくと、それを実績として、より公的な栄典である褒章受章に一歩近づく、という点もあるだろう。農家関係でいえば、黄綬褒章ということになるか。

さて、本体を見てみよう。その名の通り、白いストライプの入った緑色のリボンに、八稜の神鏡型の銀製メダルである。上部に篆書体で「大日本農会」、中央に大きく「有功章」。
左右を囲むのは、稲と麦。さりげなくリアルな作物の描写に、制作者の技術を感じさせる。
そして、裏面には手彫りで「~~君」と受章者のフルネームが刻まれている。「君」という表現がいかにもそれらしく感じる
なお、ケースは勲章のそれによく似た黒漆塗り箱に金文字で、なかなか立派なモノである。

緑白綬有功章以外にも章はあるのだが、これが最もポピュラーで今年は60人あまりが受章している。
ほかには、紅白綬有功章、紫白綬有功章、紫紅綬名誉章、などというものもあるが、これらは数が少ない。有功章については、リボンの色が違うだけで、メダルそのもののデザインは同一である。

それにしても、民間団体の栄誉章というのはいろんなレベルで存在するが、その権威を高めるのは容易ではない。その点、大日本農会は受章のアリガタミを一定以上にキープし続けているというのは、それはそれですごいことのように思う。