徽章はバッジにしてピン

世界の徽章文化を考察するブログ。というか、バッジが大好き。コレクションを紹介したり、バッジに関する情報を考察したり。実用性皆無、実生活への寄与度ゼロ保障のブログです。

アメリカ 書籍「カンバッジが語るアメリカ大統領」 ~集英社新書ヴィジュアル版~

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今日、本屋で新刊チェックをしていたら、新書コーナーで目に飛び込んできたのがこの本。
カンバッジが語るアメリカ大統領」(志野靖史著、集英社ヴィジュアル版)。新刊ホヤホヤの一冊である。
昨日はアメリカで刊行された日本バッジの本を紹介したが、今日はその逆。それにしても、新書版でこういうマニアックな本が出るというのも思えばスゴイなあ。

まだほとんど目を通していないのだが、バッジはすべてカラーページ。時代ごとの大統領やスローガンバッジが紹介されていて、カラフルである。バッジの基礎用語、バッジ裏面のツクリの説明などもあって、実物を見たことのない人にも親切だ。

こうしたキャンペーンバッジがアメリカで登場したのは、19世紀末のことだそうだ。当初は、セルロイドで表面を覆って裏面の金具で留めるタイプであった。
やがて安価で大量に作れるバッジは、アメリカの政治キャンペーンで不可欠のアイテムとなり、発展を遂げていく。それは時代を映し出すアイテムとなった。
本書曰く、
いかめしげな表情で大統領がポーズをとる19世紀のアイテム
 平和と繁栄の1950年代には楽しげなアイクのアイテム
 ベトナムと国内分裂に苦しむ60年代後半には、メッセージのこもったアイテム
 70年代後半は新鮮でコミカルなカーターのアイテム
 そして、80年代にはゴージャスでスノッブレーガンのアイテム

私もアメリカ大統領バッジはいくつか所有しているが、あまり集める気が起こらず、数は多くない。著者のように各時代にわたって多数のバッジを集めれば、アメリカの政治文化を映し出すユニークなアイテムであろう。アメリカには、これらバッジのコレクターが少なくないと聞く。
まさに、アメリカの徽章文化の一端がうかがえる分野といえる。

本をぱらぱらめくって、バッジの写真を眺めていると、まさにアメリカのポップカルチャーを感じる。時には威厳を漂わせる厳格な表情で、時にはむき出しの笑顔で、こちらに訴えかける男たち(大統領)の肖像。とにかく、簡単で、わかりやすくなくてはダメだ。スローガンも、キャッチフレーズもごく短く。パッと目に入って、即わかるものでなくてはいけない。
こうして、これらアイテムはスタートからしポップカルチャー的存在になったのだろう。

中国の文革時代の毛沢東バッジや北朝鮮金日成バッジなどを、奇妙で異様な存在と感じる人たちも世間にもいるが、まあ気持ちはわかるしある意味その通りだと思うが、アメリカの大統領バッジも、本当の根っこの部分はほとんど同じなのではないか。
一方は共産主義の、一方はその正反対の政治システムから生まれた政治的アイテムだが、大衆と政治の関わりとは何なのかを考えさせられる。

おそらく初版でほとんど終わるんじゃないかと思う本だが、日本語で読めるという意味では貴重な本という気もするので、興味のあるムキはお早めにお買い求めください。