徽章はバッジにしてピン

世界の徽章文化を考察するブログ。というか、バッジが大好き。コレクションを紹介したり、バッジに関する情報を考察したり。実用性皆無、実生活への寄与度ゼロ保障のブログです。

中国 共和万歳(花銭)

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今日は10月10日双十節辛亥革命(1911年)の記念日。
せっかくなのでそれに因んだネタを・・・と探したものの適当なバッジが見あたらない。だからといって別のネタにするのも何なので、バッジ以外のモノを取り上げる。

清朝誕生から2百数十年。中国の大多数を占める漢民族は、おびただしい血を流しつつ革命を成立させ、満州族の支配を脱した。のみならず、数千年に及ぶ皇帝・王朝支配の政治を終わらせ、近代的な共和主義国家を誕生させた。
これが辛亥革命であり、その結果生まれたのが中華民国である。
当時、たくさんの共和主義万歳、中華民族万歳の記念品が作られたのも、時代の熱気があればこそだと思う。

さて、画像を見てほしい。
一見、貨幣のようだが通貨ではなく、これは「花銭」といって、コインの形をした一種のお守り的なアイテムと考えてほしい。日本でも同様のモノは古くからあり、厭勝銭などともいわれる。現代の 開運グッズみたいなものであろう。

これは何年か前に、北京で買ってきたものだ。初め見たときは、単なる古銭か・・・と思い、古銭には関心がないので見過ごすところ、七宝で彩られているのに気がつき、花銭とわかった。しかも、「共和万歳」である。中華民国成立期の記念品だ。

材質は白銅であろうか。伝統的な方孔円銭の形をしており、一面には「共和万歳」、もう一面は「連仲三元」。文字と中央部に透明な七宝がかけられている。
「共和万歳」、はいうまでもなく新国家である中華民国成立を祝した文字だが、問題は「連仲三元」だ

これは中国の科挙制度に由来する。
科挙の試験は、童試→郷試→会試→殿試と続き、これをクリアしてようやく中央官僚となる。とにかくものすごい試験制度で、競争率も高く、最終合格に至る道は果てしなく遠い。
トップ合格者には各試験で呼び名があり、郷試は「解元」、会試は「会元」、殿試は「状元」。すべての試験に首席で合格した者がすなわち「三元」である。

つまり、簡単に言うと、「連仲三元」というのは、三元になれますように・・・といった「合格祈願」「開運成就」の願いごとなのだ。中国の花銭ではメジャーな文句のようだ。

しかし、これはどうであろう。
辛亥革命は、時代に立ち後れ、帝国主義列強にやられっぱなしの中国を生まれ変わらせるために起きた。中華民国はすぐに科挙制度を廃止。旧態依然とした、古典丸暗記主義の科挙など、全く有害無益でしかなかったのである。隋唐の時代から連綿と続いてきた科挙という制度は、こうしてあっけなく終了した。

・・・という歴史を思うと、この花銭、私としては非常に違和感を感じざるを得ないのである。
新生共和主義国家万歳といいつつ、科挙で首席合格するくらい成功したいな~という願い事はちょっと変じゃないのかと。これってある意味政治的問題じゃないの?
いや、人民の率直な願望に基づけば、別に変でも問題でもないのかもしれない。それとも、「連仲三元」や「三元及第」なんてのは単なる慣用句、あるいはモノのタトエに過ぎず、科挙制度のあり方なんてことをここで問う意味はないのか。

うーん、どちらもありそうだけど、なにかこう、大衆のたくましさというか保守性というか、そんなことを考えさせるアイテムであった。