徽章はバッジにしてピン

世界の徽章文化を考察するブログ。というか、バッジが大好き。コレクションを紹介したり、バッジに関する情報を考察したり。実用性皆無、実生活への寄与度ゼロ保障のブログです。

中国 李鴻章バッジ

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岩波新書の新刊、岡本隆司著「李鴻章」を読んだ。日本にとっても特になじみの深い人物で、清末には、中国の軍事、外交を一手に担っていたと言っても過言ではない政治家である。
中国の伝統的教養に富むエリート進士(科挙合格者)でありながら、中国の無力を誰よりも深く理解もしていたであろう。
軍事政治財政の権を一手に握り、各種の改革を断行し、あたかも清朝を1人で支えるかに見えた彼でも、根本的な改革はできなかったのであった。結局、日清戦争の敗北で、育て上げてきた北洋海軍と淮軍すべてを失うこととなった。日清戦争で日本が戦ったのは、清国軍というより、李鴻章軍であったといっていいかもしれない。

最近では、中国国内での李鴻章に対する評価も変わってきたようだ。昔は売国奴、国家を私物化した男などさんざんだったけど。

で、李鴻章のバッジなのだが、これがない。そもそも中華民国以前の中国のバッジ(メダル等も含む)で、肖像が描かれているものというのがほとんどない。
そんなわけで、私が持っている李鴻章バッジは、アメリカ製のいわゆるカンバッジだ。
LI HUNG CHANG CHINESE STATEMAN」と書かれている。
バッジ裏にはメーカーの紙が残っていて、「THE WHITEHEAD & HOAG CO. NEWARK N.J.」と読める。

このバッジはなんなのか。実は、これは単独のバッジではない。全部で9枚セットのうちの一枚である。私が欲しかったのは、李鴻章のこれ一枚だったのだが。
他もすべて人物肖像のバッジで、どんな人物がいるかというと、スウェーデンのオスカル2世、フランスのフェリックス・フォール大統領、プロイセンモルトケ伯爵、デンマークのクリスチャン9世、イギリスの詩人アルフレッド・テニスンアメリカの詩人ヘンリー・ロングフェロー、イギリスのプリンス・オブ・ウェールズエドワード7世)、イギリスのオリバー・クロムウェルである。

クロムウェルだけ時代がずれていて、なんでコイツが混じっているかは不明だが、あとはみな19世紀末に活躍した人物ばかりで、この時代に作られたモノじゃないかと考えている。その根拠は、エドワード7世が「プリンス・オブ・ウェールズ」と書かれているので、彼がイギリス国王に即位する1901年よりも前にこれらのバッジが作られたと推測されるからだ。
つまり、世界の著名人バッジ、みたいなシリーズと思われる。クロムウェルはなんだろね?別なバッジのシリーズがあって、紛れ込んだのかなあ?
他はみな欧米の著名人で李鴻章だけ浮いている気もするが、元々はもっとたくさんバッジがあったのかもしれない。

それでも、当時の中国を代表する人物として、皇帝でも西太后でもなく、まず李鴻章の名が上がることは、順当だろう。特に外国人からすれば、当たり前のことであったと思う。